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2023.6.9

【五重塔 時代の波越えて】五重塔とは

世界遺産・古都奈良の象徴としてたたずむ興福寺の国宝・五重塔が、〔2023年〕7月から約120年ぶりの大規模修理に入る。地震、台風などの天災や、明治維新、第2次世界大戦など時代の波をくぐり抜け、600年近く日本独自の美を伝えてきた姿は、しばらく見られなくなる。同じく修理にとりかかった山形・羽黒山、山口・瑠璃光寺、台風被害から復活した奈良・室生寺の五重塔と併せて紹介する。

 
法隆寺五重塔

仏塔 心柱立て五層造る

釈迦の遺骨を土中に埋めた仏塔。初期は土まんじゅうを作り、囲いや傘で覆った。インドから中国、朝鮮を経て伝わり、日本では中心に心柱を立てて五層の塔を造る独特の姿となり、各地の寺院が象徴的な建造物として建設した。初層には仏像、経典などをまつる。

国宝指定は9件、重要文化財が14件。法隆寺五重塔が現存では最古で飛鳥時代の建立だ。木造の五重小塔、十三重塔、三重塔、多宝塔などのほか、石造りの五重塔もある。

東寺五重塔

江戸時代以前に建立された現存の五重塔に地震による大きな被害は確認できないという。ただ、落雷、火災や台風などの強風で、失われた例は数多い。昭和以降では、1934年の室戸台風で四天王寺五重塔(大阪市)が倒壊、第2次世界大戦中の45年には浅草寺五重塔(東京都台東区)が空襲で焼失している。

五重塔の維持には、30~60年ごとに屋根のふき替え、150年をめどに解体修理が必要になる。巨額の費用が所蔵者には大きな負担となるため、国が費用の原則半分を補助している。文化庁は「所蔵者の負担を減らすため民間から資金を集める仕組み作りをしたい」(山下信一郎・文化財鑑査官)とクラウドファンディングを使った修理には補助率を引き上げる制度を昨年度から導入した。

醍醐寺五重塔

修理を担当する人材の確保も大きな課題だ。国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に登録された「伝統建築工匠の技」に選定した保存団体への発注を補助の条件とし、次世代の人材育成も図っている。

海住山寺五重塔
明王院五重塔

(2023年6月4日付 読売新聞朝刊より)

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