先人の知恵から学び、自然と調和する――。伝統文化の価値を再評価するイベント「現代の
匠 たち~藝能 と工藝 の饗宴 2022~」が9月24日、東京都中央区の観世能楽堂で開かれた。野村万作さんら芸能の人間国宝が狂言、義太夫、能の仕舞を披露したほか、工芸の人間国宝の作品が特別展示され、来場者は両分野の至芸を堪能した。
金工や漆、陶磁器など美術工芸の粋を集めた茶道具、茶室のしつらえが総合芸術と称される「茶の湯」をテーマに、一般社団法人「TAKUMI―Art du Japon」が主催した。「茶の湯と匠の文化」について基調講演した茶道武者小路千家の家元後嗣・千宗屋さんは「茶道具も楽しみの一つだが、茶の湯の主役は人対人が心を通わせる有りようにある」と強調。「主客の一期一会の成就のために技術を結集させたからこそ、日本文化を代表する存在たりえた」と説いた。
続くシンポジウムでは、元文化庁長官で「TAKUMI」代表理事の近藤誠一さんを聞き手に、宗屋さん、能楽狂言方・野村萬斎さん、漆芸の人間国宝・室瀬和美さんが伝統文化の共通点や継承のあり方などを語り合った。萬斎さんは「技術の先にある精神性や物を超越した世界観の共有に、自由と広がりがある」と述べ、室瀬さんも「自然の素材や特色を消さない点が、全ての日本文化の根底」などと応じた。
この日は能楽シテ方や狂言方、文楽太夫の人間国宝らが茶道にちなんだ演目を上演したほか、会場のロビーでは工芸の人間国宝による志野
当日は、10人の中高生が招待された。「能楽堂の空気感を肌で感じることができうれしかった。伝統文化はとっつきにくいと感じる人が多いので、少しでも体験できると親しむきっかけになる」「シンポジウムでは伝統を継ぐ人や学ぶ人が減っていることを感じた。日本の伝統文化をどのようにして世界に伝え、後世に残すか、しっかり考えられた日になった」などの感想が聞かれた。
写真: 一般社団法人TAKUMI-Art du Japon提供、前島吉裕撮影
(2022年11月6日付 読売新聞朝刊より)
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