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2022.11.24

【魅せられて 茶の湯と私1】「ティー道でトゥギャザー」 タレント・俳優 ルー大柴さん 

京都ゆかりの名品から茶の湯の歴史をたどる特別展「みやこに生きる文化 茶の湯」(読売新聞社など主催)が、京都国立博物館(京都市東山区)で開催されている。400年以上にわたり日本人の心に息づく茶の湯の魅力を、ゆかりの著名人に語ってもらった。

ルー大柴さん(田中秀敏撮影)
50歳過ぎて挑戦、師範に

このお茶碗ちゃわん、いいでしょう? 義理の母が若い時にお茶をしていて、亡くなった後にもらったんです。色がいいし、この渋さがすごくすてき。よくこれでお茶をててドリンクしています。

たまに持ち歩いて、舞台をやっている時、共演者やスタッフにもお茶を点てて飲んでもらうと、すごくフレンドリーになります。和菓子じゃなくて、チョコレートでもいいんです。気楽にお茶で一休み。それがルー流のティー(茶)道ですね。トゥギャザーしましょう。

30代後半だった1990年代、英語を織り交ぜた「ルー語」でブレイクしましたが、だんだん仕事が減り、40代後半は生活も不安定でした。今のマネジャーになって、50歳を過ぎた頃「何か新しい挑戦を。茶道なんかどうでしょう」と勧められた。今までのルーじゃない、新しい武器をということです。

2006年、茶道教室に通い始めましたが、最初は大変で、「できるのだろうか」と不安でした。正座は足が痛いし、茶器や茶碗、水指みずさしなどいろいろな道具に置き方があって、所作も毎回覚えることがいっぱい。お稽古のたび、たくさん間違えました。

「やめようかな」と思った時期もあったけど、「もしかしたら続けられるんじゃないか」という気になったのは3年たってから。ストーン(石)の上にもスリーイヤーズ(年)ですね。少しずつ、できるようになって。始めて4年で準師範となり、7年半かかって13年に師範の許状をいただきました。

茶道を習い始めた頃のルー大柴さん=本人提供

習っているのは遠州流という流派です。江戸時代の大名・小堀こぼり遠州えんしゅうが、サウザンド(千)利休さんやオールド・フィールド(古田)織部さんのティー道をベースに、自分のアイデアとセンスを注ぎ込んで確立しました。武家の茶道で、特徴は「綺麗きれいさび」。利休さんのわびさびに、洗練され、あか抜けた独自の美意識をプラスしています。

お茶を点てている時は「今・ここ」に集中します。茶室で皆さんに見られている緊張感の中で、所作を何回も繰り返して身体に覚え込ませ、度胸がつきました。根気強く指導をしてもらって、やっと、自分を信じ切る強さが身についたように思います。ティー道に挑戦して本当によかったなと思います。

仕事でアラスカに行った時、ジャパンから持参したポータブルのお茶セットで、現地のコーディネーターに茶を点てました。そうしたら、非常にリスペクトしてくれて。お茶を入れたら急にね。おもてなしの心を持って、どこでもドリンクしてもらう。大事なのは、その気持ちですよ。

お茶は格式も大事だけれど、もっとフリー(自由)に親しんだらいいなと思います。ちょっと点てて、みんなで15分でも30分でも楽しむ。お茶って、そういう魅力を持っていますよ。所作を知らなくても、誰でも点てられると思います。

(聞き手・持丸直子)

ルー大柴(るー・おおしば) 東京都出身。68歳。遠州流茶道の師範で、茶人名は大柴宗徹そうてつ。山野美容芸術短大客員教授も務める。俳優として出演した「仮面ライダーBLACK SUN」(全10話)がアマゾンプライムビデオで配信中。「久しぶりにアクターとして、悪の総理大臣役でオールモースト全部出ています」

(2022年11月4日付 読売新聞夕刊より)

 

特別展「京に生きる文化 茶の湯」
(京都国立博物館)
公式サイトはこちらから

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