宮内庁三の丸尚蔵館は、大正天皇と貞明皇后の第四皇男子として誕生された三笠宮崇仁親王(1915~2016年)の御服を収蔵している。沖縄県立博物館・美術館で開催中の「皇室の美と沖縄ゆかりの品々」展では、その御服の中から、束帯などの伝統的な装束とともに、ご幼少時の晴れ着も展示している。
貞明皇后は、崇仁親王のご成長に合わせて晴れ着をお誂えになり、誕生日などの折に贈られた。一般に、子どもは体温が高く、よく動きまわるため、熱がこもらないように腋が開いた振り袖を着る。崇仁親王のご幼少時の晴れ着も振り袖で、子どもらしい明るい色合いのものが多く、伝統的な吉祥文や公家の装束などに用いられた有職文、草花などの模様が使われている。
崇仁親王が3歳の頃に着用された「紫紋縮緬地竹梅水仙雪花模様」の振り袖は、斜めの縞を織り表した生地に、ふくよかな梅や竹の折枝、水仙の花など初春らしい模様を刺繍し、大正時代のモダンな雰囲気のある色鮮やかな晴れ着だ。
「黒紅綸子地落瀧津模様」の振り袖は、大正8年(1919年)12月に4歳になられた崇仁親王が「着袴の儀」に際し、ご両親へあいさつをされた折、白い袴と合わせて着用された晴れ着である。
着袴の儀は、幼児が初めて袴を着けて、その成長を祝う皇室の伝統的な儀式で、一般の七五三にあたる。
橘と松に、流れ落ちる滝と岩波で吉祥を表した落瀧津模様が用いられ、崇仁親王の健やかなご成長と長寿への願いが込められている。
(宮内庁三の丸尚蔵館主任研究官 小林彩子)
◆皇室の美と沖縄ゆかりの品々【会期】2月19日(日)まで
【会場】沖縄県立博物館・美術館(那覇市おもろまち)
【主催】沖縄県立博物館・美術館、沖縄美ら島財団、宮内庁、文化庁
【特別協力】紡ぐプロジェクト、読売新聞社
【問い合わせ】098・941・8200
(2023年2月5日付 読売新聞朝刊より)
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