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2026.9.8

【技を継ぐ あをによし賞20年】(6)「からむし」は絶えず輝く ―「織姫」栽培から織りまで体験 11月3日にトークイベントも

五十嵐吉彦会長(右)が見守る中、繊維を取り出す工程「苧引き」に取り組む門元有寿さん

「シュー、シュー」。リズミカルな音が作業場に響くと、青草のみずみずしい香りが広がった。

〔2026年〕8月上旬、福島県昭和村の作業場で、門元有寿かどもとありすさん(43)が早朝に畑から刈り取った「からむし」の繊維を取り出す「引き」を行っていた。青々とした表皮に金属製のヘラを当て、こそげ落とすように動かすと、真珠のように光沢のある繊維が現れた。数日陰干しして繊維を紡ぐと、通気性と吸湿性に優れた糸に仕上がる。

透明感のあるからむしの繊維は「キラ」と呼ばれる。「引き方や力加減は千差万別で正解がない。何年やってもできた気がしない」と門元さんは笑う。

からむしはイラクサ科の多年草。「苧麻ちょま」の名で古代から繊維として使われ、国苧麻重要無形文化財の小千谷ちぢみ・越後上布じょうふの原料としても知られる。村では江戸中期から栽培してきたが、戦後、化学繊維の普及と農家の高齢化で生産量は減少した。

「からむしは絶やすな」と、農家らが1990年に「昭和村からむし生産技術保存協会」を設立。手作業による栽培と苧引きの技術保存、後継者育成に取り組み、2014年に第8回読売あをによし賞本賞を受賞した。

後継者育成の要となっているのは、村が1994年に始めた体験生事業だ。全国から希望者を募り、体験生は村内に住み込み、栽培から織りまで一連の工程を学ぶ。女性の体験生は「織姫」と呼ばれ、今年も5人が活動している。

これまでの体験生151人のうち36人が村に残る。生産に携わる人も多く、五十嵐吉彦会長(68)は「織姫が当たり前の存在だったからむしの価値を再認識させてくれた。安心して取り組めるようにサポートしていく」と力を込める。

千葉県出身の門元さんも15期生の織姫だ。都内の短大で織工芸を学び、栽培から携われるからむしに魅力を感じた。「全ての工程を自分の手でできるのが楽しい」とやりがいを語る。

2メートル前後に育ったからむしを収穫する門元さん(左)ら(いずれも福島県昭和村で)

農家の高齢化は今も解消されておらず、2014年度に37軒あった栽培農家は20軒に減った。村では24年度から、小中学校9年間で苧引きや織りを体験する地域学習「苧麻育」を始め、興味を持つ子どもを増やそうと取り組んでいる。

「体験生から『苧引きを見せてほしい』と頼られることも増え、わかる範囲で技術を伝えている。それが村やからむしへの恩返しになるから」と門元さん。村のからむしは着実に次世代へ受け継がれている。(土谷武嗣、おわり)

◆創設20年記念 トークイベント 11月3日、大阪で

文化財の保存や伝統文化の継承に取り組む個人・団体を顕彰する「読売あをによし賞」の創設20年を記念し、賞の歩みや文化財保存の未来を語るトークイベント「未来へつなぐ文化財 保存と継承」が11月3日、大阪市北区のリーガロイヤルホテル大阪で開かれる。

同賞は2007年に創設され、文化遺産の保存活動や継承に取り組む団体や個人を表彰してきた。23年からは「保存・修復」と「継承・発展」の2部門で選定している。

トークイベントは第20回受賞者の表彰式に合わせて開催。賞の運営・選考委員を務める三輪嘉六さん(文化財保存支援機構理事長)、室瀬和美さん(重要無形文化財「蒔絵まきえ」保持者)のほか、学芸プロデューサーの橋本麻里さんが、有形・無形文化財を未来へ伝えていく意義を語り合う。

午後2時開会。入場無料。参加申込み:https://events.yomiuri.co.jp/osaka-j/awoniyoshi-talk(読売IDが必要)。定員150人(同伴者1人まで可。応募者多数の場合抽選)。問い合わせは事務局(06・6366・1857=平日午前10時~午後5時。メールawoniyoshi@yomiuri.com)。

(2026年9月6日付 読売新聞朝刊より)

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