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2021.1.8

首里城 よみがえる姿~焼失の正殿模型、再建の願い込め展示

「日本のたてもの」で展示中の首里城正殿1/10模型

沖縄県立博物館・美術館が所蔵する首里城正殿の模型が、東京国立博物館(東京・上野公園)で開催中の展覧会「日本のたてもの」(文化庁、日本芸術文化振興会、読売新聞社など主催)で展示されている。一昨年の火災で焼失した首里城再建への願いも込めた展示となる。

琉球王国のシンボルといえる首里城は14世紀頃の創建とされる。中国や日本の文化が混じり合った琉球独特の城郭建築だ。

琉球が沖縄県となった後の大正時代には取り壊しの危機にあったが、専門家から保存を訴える声があがり、「沖縄神社拝殿」として文化財指定(旧国宝)された。

「沖縄神社拝殿」の正面図。国立近現代建築資料館(東京・湯島)で展示中だ

1945年の太平洋戦争沖縄戦で焼失した正殿は92年に復元され、文化的・歴史的な価値の高さから世界文化遺産に登録された。しかし、2019年10月の火災で再び正殿は焼失。現在、26年完成を目指して復元に向けた準備を進めている。

今回展示される模型は実物の10分の1サイズで、高さ1.7メートル、幅3メートル。戦前に行われた正殿の修理や戦後の守礼門復元などに携わった大工の知念朝栄さんが1950年代に製作した。

沖縄戦で失われた首里城の復元を願い、アメリカスギなど限られた資材を用いて作られており、92年の正殿再建の際にもこの模型が参考にされた。

沖縄県立博物館・美術館の外間一先主任学芸員は「焼失した首里城の復興に向けて、多くの方々から支援をいただいている。過去にも再建のモデルとなった模型を多くの人に見てもらい、復興への思いを共有したい」と話している。

火災で黒ずんだ屋根瓦や装飾物の汚れを落とすボランティアたち(那覇市の首里城公園で)

那覇市の小高い丘の上にある首里城公園は現在、一部エリアを除いて利用が再開されている。焼失した正殿の跡地では、焼け落ちた柱の跡や屋根から落下した龍のヒゲ、石獅子などの残存物を見学しながら歩くことができる。

近くに張られた白いテントの下には大勢のボランティアが集まり、火災で黒ずんだ屋根瓦や装飾物の汚れを丹念に落とす作業に励んでいた。再建に向けた歩みは着実に進み始めている。

東京国立博物館の展示は2月21日まで。開館日など詳細は公式サイト(https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tatemono/)へ。「沖縄神社拝殿」の図面も、国立近現代建築資料館(東京・湯島)で見ることができる。

(2021年1月7日読売新聞より掲載)

「日本のたてもの」公式サイトはこちら

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tatemono/

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