都の平安と秩序を守るのが室町幕府の役割とされ、均整の取れた構図からは、武家の
その後、下克上の世の中に移る中、洛中洛外図屏風の表現や構図も変化する。著名な上杉家本(1565年)は織田信長から上杉謙信に贈られたというもので、まばゆく輝く金雲や、躍動的な人々の姿が特徴だ。
室町の秩序を打ち破った表現手法は安土桃山時代の「聚楽第図屏風」に結実。豊臣秀吉の京都の政庁として造られた聚楽第を目立たせる大胆な作品だ。東京国立博物館学芸企画部長の田沢
江戸時代初期の「洛中洛外図屏風」の勝興寺本は、街並みの構図は室町時代の洛中洛外図屏風に似ている一方、徳川家の京都の拠点の二条城が大きく描かれる。天下人の権勢を示す信長・秀吉時代の影響を受けた、徳川期ならではの「桃山美術」の特徴だろう。
2020年10月4日付読売新聞より掲載
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