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2020.12.18

京都迎賓館に「匠の技」を見る~伝統建築の粋

伝統建築の技術が詰まった京都迎賓館

海外からの要人や賓客をもてなす目的で2005年に開館した京都迎賓館(京都市)には、日本の伝統建築に欠かせない技術の粋が詰まっている。

中庭と調和する「数寄屋造り」のひさし、美しい金物の装飾、良質な藺草いぐさのみを用いた畳――。和の建築文化を多彩に盛り込んだぜいたくな空間は、世界的にも高く評価されるたくみの技によって生み出された。

代表的な七つの技と、自然素材にこだわる職人たちの思いを紹介する。

京都迎賓館の模型。「日本のたてもの」展の国立科学博物館会場で展示されている
■京都迎賓館

京都御苑(京都市上京区)の饗宴きょうえん場跡地に開館した。地上1階、地下1階の鉄筋コンクリート造で、伝統技術と最新技術を融合した「現代和風」の建物。

庭と一体化した「庭屋ていおく一如いちにょ」の空間を表している。自由参観は大人1500円、ガイドツアーは同2000円。

〈1〉左官    

左官は、日本壁を仕上げる技術。京都迎賓館の建設工事に先立つ埋蔵文化財調査で良質の壁土「聚楽じゅらく土」が見つかった。

豊臣秀吉が京都御所西側に建てた「聚楽第」から名付けたという。“地産地消”の土で、上品な色合いの壁が部屋や露地に塗り込まれた。

〈2〉建造物装飾 
「藤の間」にあしらわれた錺金具

彩色や鋳物製作など、建造部を装飾する技術の総称。

京都市にある老舗「礒村」が手がけた「かざり金具」は、晩餐ばんさん室「藤の間」に使われた。組みひもを元にデザインしたという。

舞台扉にあしらわれた「截金」の技法も見どころだ

この部屋の舞台扉は、細く切った金箔きんぱくで仏画や仏像を荘厳した古来の技法「截金きりかね」を現代に生かし、厳かに彩られた。

〈3〉建造物木工

露地や廊橋ろうきょうの天井に、舟の底を仰いでいるように見えるアーチ状の「舟底ふなぞこ天井てんじょう」を施すなど、伝統の木工技術が随所に凝らされた。

数寄屋造りの庇。軒を深くし、庭園と桐の間との調和を図っている

「桐の間」横に巡らされた軒深い庇を支える北山丸太の桁は18メートルにも及ぶ。クギを一本も使わない迎賓館の木組みに、技が生きる。

〈4〉建具製作  

障子や板戸、欄間格子らんまこうしなどの建具を製作する技術。部材を複数組み合わせて作るため、わずかな狂いも許されず、高度な技術と豊かな経験が必要となる。

京都迎賓館の明障子あかりしょうじは計400枚以上。障子は光を和らげ、部屋や回廊に表情豊かな空間をつくりだす。

〈5〉装こう修理技術 

絵画や書跡、古文書など、紙や絹を主材料とする文化財を修理する技術。京都迎賓館では、ふすまや障子など、紙を使った建具に活用された。

昔ながらの技法でられた小さなサイズの唐紙を一枚一枚、ゆがまないように襖に貼っていく作業など、熟練の技が生かされた。

〈6〉建造物漆塗 

建造物を漆塗で彩る技術。部材となる木地を固め、下地材を塗っては研ぎ出す工程を何度も繰り返して下地を滑らかにした後に、漆で仕上げる。

藤の間の壁面装飾の下には、黒漆の框がある

「藤の間」の横約17メートルに及ぶ壁面装飾の下に設けられたかまちは3本のひのきをつないだもので、黒漆が空間を引き締めている。

〈7〉畳製作
中継ぎ表の畳。中央にうっすらと線が入るのが特徴だ

室内に畳を敷き詰める習慣は、室町時代ごろに広まった。京都迎賓館の畳は、昔ながらの藺草の良い部分だけを使う「中継なかつおもて」の技法を用いて作られた。

藺草の穂先を中央でつなぎ、縦に薄く線が入るのが特徴。多様な部屋の形状に合わせ、畳を敷き込むのが難しい。

(2020年12月6日読売新聞より掲載)

 

京都迎賓館の模型、聚楽土、壁塗り見本、錺金具などは、展覧会「日本のたてもの」の国立科学博物館の会場で展示されている。

「日本のたてもの」公式サイトはこちら

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tatemono/

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