京都ゆかりの国宝や皇室の名品を集めた特別展「
同館の森道彦・学芸部研究員に、出展作品の中から特に注目すべき文化財と見どころについて聞いた。
皇室が守り伝えてきた鎌倉絵巻の至宝。藤原一門の氏神である奈良・春日大社に奉納されたもので、京の公家文化のありようを鮮やかに伝える。
江戸時代に一時、外部に流出したこともあったが、明治になって皇室に納められ、20巻すべてが残っている。
「色も鮮やかで非常に保存がいい。歴史的価値に照らしても、鎌倉時代の絵画を代表する名品」と京都国立博物館の森道彦研究員。
宮内庁によって特別に守られた品で、文化財指定は受けていないが、一般にあれば国宝の筆頭格に挙げられるべきものという。
狩野永徳と並び桃山時代を代表する画家、長谷川等伯が描いたもの。豊臣秀吉が早世した息子の
通常、襖絵の大きさは縦1.8メートル程度だが、この絵は2.3メートルもあり、秀吉ゆかりの建物の壮大さを物語る。後に
京都にある近世絵画の中では最初期に国宝に指定された。祥雲寺の遺産を受け継いだ智積院はいくたびも火災にあっているが、そのたびに運び出され、今に伝わっている。
「美術的な価値もさることながら、京都の人間にとって長らく思い入れのある品」(森研究員)という。
「この世をば わが世とぞ思ふ……」の歌で知られ、平安時代に栄華を極めた藤原道長の日記。当時の政治や貴族の生活を知る上で最上の史料として、1951年に国宝に指定された。美術工芸品では戦後最初に国宝となったものの一つだ。
宮中の模様などを克明に記した日記は26巻が残り、そのうち14巻が道長自筆のものである。道長の
「平安文化を知ることはここから始まると言っても過言ではない、まさに歴史の原本のような作品。何があっても守られてほしい」と森研究員は話す。
(2021年4月4日読売新聞より掲載)
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