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2023.10.30

【皇室と近代の陶磁・下】伝統と両立 写実的な肉感(茨城県陶芸美術館主任学芸員・飯田将吾)

皇室に伝わる明治から現代の陶磁器を中心に、茨城とゆかりの深い作家の作品も紹介する企画展「皇室と近代の陶磁 三の丸尚蔵館名品展」が、〔茨城〕県陶芸美術館(笠間市笠間)で開かれている。見どころを3回にわたり紹介する。

「陶彫唐獅子」
皇居三の丸尚蔵館収蔵

「陶彫唐獅子」

沼田一雅
昭和3年(1928年)

作者の沼田一雅ぬまたいちがは陶磁と彫刻の技法を組み合わせた「陶彫とうちょう」の日本における第一人者である。

本作は秩父宮家の御殿玄関脇の置物として制作され、後に同家より三の丸尚蔵館へと遺贈された。大型の玄関装飾は銅像が一般的であるが、依頼主の秩父宮雍仁やすひと親王が陶芸に造詣が深かったこともあり、陶器が素材として選択された。

沼田の作品の中でも大作で、伝統的な狛犬こまいぬの様式を踏襲しつつも、獅子の写実的な肉感がみごとに表現されている。全体の色調は、茶葉末釉ちゃようまつゆうとよばれる濃い緑色で、さながらブロンズのような重厚感を帯びている。

沼田は1932年に京都の国立陶磁器試験所彫刻部主任の嘱託となった。笠間の個人作家である塙彰堂はなわしょうどうも1936年に入所し陶彫を学ぶなど、茨城へもその影響は及んでいる。

(県陶芸美術館主任学芸員 飯田将吾)

◇     ◇     ◇


〔2023年〕12月10日まで。県陶芸美術館(0296・70・0011)。

(2023年10月27日付 読売新聞朝刊より)

◇ 皇室と近代の陶磁 三の丸尚蔵館名品展

【会期】9月16日(土)~12月10日(日)月曜休館。11月13日は開館

【会場】茨城県陶芸美術館(茨城県笠間市)

【主催】茨城県陶芸美術館、宮内庁

【特別協力】文化庁、紡ぐプロジェクト、読売新聞社

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