皇室に伝わる明治から現代の陶磁器を中心に、茨城とゆかりの深い作家の作品も紹介する企画展「皇室と近代の陶磁 三の丸尚蔵館名品展」が、〔茨城〕県陶芸美術館(笠間市笠間)で開かれている。見どころを3回にわたり紹介する。
沼田一雅
昭和3年(1928年)
作者の沼田一雅は陶磁と彫刻の技法を組み合わせた「陶彫」の日本における第一人者である。
本作は秩父宮家の御殿玄関脇の置物として制作され、後に同家より三の丸尚蔵館へと遺贈された。大型の玄関装飾は銅像が一般的であるが、依頼主の秩父宮雍仁親王が陶芸に造詣が深かったこともあり、陶器が素材として選択された。
沼田の作品の中でも大作で、伝統的な狛犬の様式を踏襲しつつも、獅子の写実的な肉感がみごとに表現されている。全体の色調は、茶葉末釉とよばれる濃い緑色で、さながらブロンズのような重厚感を帯びている。
沼田は1932年に京都の国立陶磁器試験所彫刻部主任の嘱託となった。笠間の個人作家である塙彰堂も1936年に入所し陶彫を学ぶなど、茨城へもその影響は及んでいる。
(県陶芸美術館主任学芸員 飯田将吾)
◇ ◇ ◇
〔2023年〕12月10日まで。県陶芸美術館(0296・70・0011)。
(2023年10月27日付 読売新聞朝刊より)
◇ 皇室と近代の陶磁 三の丸尚蔵館名品展
【会期】9月16日(土)~12月10日(日)月曜休館。11月13日は開館
【会場】茨城県陶芸美術館(茨城県笠間市)
【主催】茨城県陶芸美術館、宮内庁
【特別協力】文化庁、紡ぐプロジェクト、読売新聞社
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