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2023.10.26

【皇室と近代の陶磁・上】日本の草花 西洋風に(茨城県陶芸美術館主任学芸員・飯田将吾)

企画展「皇室と近代の陶磁 三の丸尚蔵館名品展」

皇室に伝わる明治から現代の陶磁器を中心に、茨城とゆかりの深い作家の作品も紹介する企画展「皇室と近代の陶磁 三の丸尚蔵館名品展」が、〔茨城〕県陶芸美術館(笠間市笠間)で開かれている。見どころを3回にわたり紹介する。

「四季草花図食器」
皇居三の丸尚蔵館収蔵

「四季草花図食器」

幹山伝七
明治時代前期(19世紀)

本展出品作は皇室や宮家で実際に使用されたものを多く含むが、本作もその一つである。12種類594点が現存する和食器のセットの一部で、来客の饗応きょうおうを目的に有栖川宮家のために制作され、1913年の同家の断絶により高松宮家へと引き継がれた後、2005年に三の丸尚蔵館に遺贈された。

それぞれの器は、伝統的な日本の草花が、西洋の影響を受け写実的な画風で描き出されており、縁を彩る七宝しっぽう文やかすみを表現した金彩と相まって作品の装飾効果を高めている。器種は用途ごとになます皿や漬物入れなど細やかに区分され、色絵磁器による洋食器風のスタイルを、和食器へと取り入れるための工夫が見て取れる。

明治初期に皇室の依頼で洋食器などを多く手がけた幹山かんざん伝七でんしちによる傑作である。

(県陶芸美術館主任学芸員 飯田将吾)

◇     ◇     ◇

12月10日まで。県陶芸美術館(0296・70・0011)。

(2023年10月24日付 読売新聞朝刊より)

◇ 皇室と近代の陶磁 三の丸尚蔵館名品展

【会期】9月16日(土)~12月10日(日)月曜休館。11月13日は開館

【会場】茨城県陶芸美術館(茨城県笠間市)

【主催】茨城県陶芸美術館、宮内庁

【特別協力】文化庁、紡ぐプロジェクト、読売新聞社

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