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「平成度 悠紀地方風俗歌屏風」 東山魁夷 1990年 宮内庁三の丸尚蔵館収蔵

2023.8.3

【皇室の名宝と秋田・中】東山魁夷描く 秋田の四季(秋田県立近代美術館学芸主事・保泉充)

特別展「皇室の名宝と秋田―三の丸尚蔵館 収蔵品展」

皇室に代々受け継がれた美術工芸品を通して、秋田と皇室のつながりに触れる特別展「皇室の名宝と秋田―三の丸尚蔵館 収蔵品展」が、〔秋田〕県立近代美術館(横手市赤坂)で開かれている。見どころを3回にわたり紹介する。

 

「平成度 悠紀地方風俗歌屏風」

東山魁夷
1990年 宮内庁三の丸尚蔵館収蔵

新天皇が即位後に行う行事に、新穀を神前に供える大嘗祭だいじょうさいがあります。この大嘗祭の後に開かれる大饗だいきょうの儀で用いられる屏風びょうぶとして描かれたのが本作です。

屏風には、東の悠紀ゆき地方と西の主基すき地方を詠んだ歌の風景が描かれます。平成度の悠紀地方には秋田県が選ばれ、制作を担当した東山魁夷は、県内各地をスケッチし、春の角館、夏の男鹿半島、秋の抱返り渓谷、冬の田沢湖を色彩豊かに表現しました。魁夷の静謐せいひつで温かみあふれる作品は国民に愛され、昭和44年(1969年)61歳の時には文化勲章を受章しています。

屏風上部の色紙には、歌人窪田章一郎による、各地の風景を思い浮かべさせる和歌が4首、万葉仮名で書かれています。

(〔秋田〕県立近代美術館学芸主事・保泉充)

特別展「皇室の名宝と秋田-三の丸尚蔵館 収蔵品展」は、秋田県立近代美術館 (横手市赤坂) で2023年9月3日(日)まで開催中。問い合わせは同館(0182・33・8855)まで。

(2023年8月1日付 読売新聞朝刊より)

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