徳川家の菩提寺として知られ、今年で創建400年を迎えた東京・上野の寛永寺で国内最大級の天井絵「叡嶽双龍」が完成し、〔2025年〕12月から一般公開が始まる。同寺は天井絵をきっかけに幅広い人々が寺を訪れることを期待している。
「叡嶽双龍」は縦6メートル、横12メートルで、同寺の「根本中堂」中陣の天井一面に2匹の龍が空を舞う雄大な姿が描かれている。画材には中国・明代の墨や白土、金箔、金泥などが用いられた。
9月12日には「叡嶽双龍」の点睛開眼式が行われた。約100人の参列者らが見守る中、作者の東京芸術大名誉教授で日本画家の手塚雄二さんが最後の筆入れ「画竜点睛」を行い、水上文義貫首による開眼法要で龍に魂が込められて、天井絵が奉納された。手塚さんは「日本画家としてこれほど幸せなことはない。この双龍が永遠に人々を見守り続ける存在となることを心から願っています」と感慨深そうに話した。
「点睛開眼式」では、東京芸術大学の手塚雄二名誉教授が仕上げの筆入れを行った。(2025年9月12日、東京都台東区で)
その後、10月10日には創建400年を記念した慶讃法要が行われ、天井絵が正式にお披露目された。色とりどりの紙製の花びらをまく散華や読経などの法要の後、手塚さんに「大絵仏師」の称号が奉呈された。
10月10日の創建400周年慶讃法要
天井絵構想は浦井正明前貫首(今年3月に87歳で死去)が約10年前に「来たる創建400年の記念に後世に残るものを」と旧知の手塚さんに相談したことから始まったという。快諾した手塚さんが2021年から約4年がかりで制作した。
龍の天井絵が描かれた寺は各地にあるが、これほど大きなサイズで天井板に直接描かれたケースは珍しいという。2匹の龍が舞う構図は手塚さんの発案だった。天台宗の経典にも守護神として双龍が登場することから、水上貫首は「我が宗に最もふさわしい守護神を描いてくださった。まことに奇遇を感じ感謝の念に堪えません」と話す。
寛永寺を創建した天海大僧正は、将軍や大名だけでなく庶民にも寺を訪れてもらうことを願ったという。思いを受け継ぐ同寺は天井絵を契機に多くの人々が集うことを期待している。
12月1日からは一般公開(天井絵拝観料500円、高校生以下無料)が始まる予定だ。
(2025年11月2日付 読売新聞朝刊より)