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2022.10.9

【皇室ゆかりの名品】「旭日鳳凰図」伊藤若冲筆 生命の本質を艶めかしく描く

「旭日鳳凰図」伊藤若冲筆
 1755年(江戸時代 宝暦5年)
宮内庁三の丸尚蔵館蔵

旭日きょくじつ鳳凰図ほうおうず

縦180センチを超える巨大な画面。描かれた鳳凰ほうおうの姿はなまめかしく、その羽の文様や色彩、波や岩の形態などにも作者の創意が強く表れている。

江戸時代の絵師・伊藤若冲は、狩野派への弟子入り、中国古画の模写を重ねるうち本物の「生命」を見ることへの自覚を促され、写生によって動植物の生態を眺め、描き尽くすようになったと伝わる。本作に添えられた自筆の漢詩にも「花鳥草虫はそれぞれに霊(生命感)がある。その真(本質)を理解したときこそ作画のはじまりである」云々うんぬんと述べ、若冲の作画に対する考えの一端が示されている。

1889年(明治22年)、前年竣工しゅんこうの明治宮殿ご移転を祝って、西本願寺門主の大谷光尊より皇室に献上された。

(広島県立美術館主任学芸員 隅川明宏)

皇室に代々受け継がれた美術品から、皇室と広島をつなぐ美の世界を示す特別展「皇室の美と広島―宮内庁三の丸尚蔵館の名品から」が、広島県立美術館(広島市中区上幟町)で開かれている。前期は10月10日まで、後期は同12~30日。休館日は月曜(3、10日は開館)と同11日。県立美術館(082・221・6246)。

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