皇室ゆかりの美術工芸品から、各時代、分野の名品をそろえた特別展「美をたどる 皇室と岡山~三の丸尚蔵館収蔵品より」が、〔岡山〕県立美術館(岡山市北区天神町)で開かれている。見どころを3回にわたり紹介する。
黒住章堂
大正5年(1916年)
黒住章堂(1877~1943年)は、備前国津高郡一宮村(現在の岡山市北区一宮)の生まれ。岡山で四条派の画家岡本金波に学んだのち、京都に出て今尾景年、次いで竹内栖鳳の画塾で研鑽を積んだ。
本作は大正5年(1916年)の大阪在住時、子爵の持明院基哲を通じて献上したものとされる。
1頭の虎が上体を起こし、精悍な表情で画面左方を見据える。全身の毛並みを丁寧に描き、質感をよく表している。師の竹内栖鳳も獅子や虎を得意とし多くの作品を残したが、栖鳳の虎は動的で野生的な獣らしさを描出したものが多く見られるのに対し、本図は静的で、ある種理想化された虎の堂々たるさまが表現されている。
(〔岡山〕県立美術館学芸員 橘凜)
〔2023年〕8月27日まで。県立美術館(086・225・4800)。
(2023年7月28日付 読売新聞朝刊より)
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