2023.11.14
皇居三の丸尚蔵館収蔵品展 皇室と石川―麗しき美の煌きらめき―
皇居三の丸尚蔵館(東京都千代田区)の収蔵品から、石川ゆかりの作品や国宝などの名品をそろえた展覧会「皇居三の丸尚蔵館収蔵品展 皇室と石川―麗しき美の煌めき―」が、石川県立美術館と国立工芸館(いずれも金沢市出羽町)で開かれている。いしかわ百万石文化祭2023のメイン行事で、2館合同の開催は全国で初めて。両館の展示品から見どころを紹介する。
「鷺蒔絵筥」 松田権六
昭和33年(1958年) 皇居三の丸尚蔵館収蔵
国立工芸館で展示
漆黒を背景に、一羽の鷺が羽ばたく様子を捉えた蒔絵の飾筥です。目の覚めるような白には鶉の卵の殻を細かく割った破片を用いています。箱の側面には、金粉や切金で、水辺にたちこめる靄を表し、蓋をあけた身の側面には、流水文が、これも蒔絵で描かれています。
本作は、皇居仮宮殿の装飾品として宮内庁より制作を依頼された松田権六が、昭和33年(1958年)に納入したものです。一般に公開されるのは今回が初めてとなります。
羽ばたく鷺は、松田権六が戦前から好んで取り上げているモチーフで、本展では、国立工芸館が所蔵する同時代の同種の作品もあわせて展示しており、両作品を見比べてご覧いただける絶好の機会となっています。
金沢市出身で、昭和30年(1955年)に重要無形文化財「蒔絵」保持者(いわゆる「人間国宝」)に認定された松田権六は、暗闇を切り裂き悠然と飛翔するこの作品の鷺のごとく、この頃から戦後の蒔絵表現を刷新する代表作を次々と生み出していきました。国立工芸館では、東京にあった松田権六の仕事場を移築・再現して紹介しています。本作が制作された「現場」もあわせてご観覧ください。(国立工芸館主任研究員 北村仁美)
(2023年11月10日付 読売新聞朝刊より)
■ 皇居三の丸尚蔵館収蔵品展 皇室と石川―麗しき美の煌きらめき―
【会期】2023年10月14日(土)~11月26日(日)【会場】石川県立美術館、国立工芸館(金沢市出羽町)
【主催】石川県立美術館、国立工芸館、いしかわ百万石文化祭2023実行委員会、宮内庁、文化庁、国立文化財機構
【共催】北國新聞社
【特別協力】紡ぐプロジェクト、読売新聞社、前田育徳会
【問い合わせ】石川県立美術館076・231・7580、国立工芸館(ハローダイヤル)050・5541・8600
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