2023.11.20
皇居三の丸尚蔵館収蔵品展 皇室と石川―麗しき美の煌きらめき―
皇居三の丸尚蔵館(東京都千代田区)の収蔵品から、石川ゆかりの作品や国宝などの名品をそろえた展覧会「皇居三の丸尚蔵館収蔵品展 皇室と石川―麗しき美の煌めき―」が、石川県立美術館と国立工芸館(いずれも金沢市出羽町)で開かれている。いしかわ百万石文化祭2023のメイン行事で、2館合同の開催は全国で初めて。両館の展示品から見どころを紹介する。
国宝「春日権現験記絵」巻八 高階隆兼
鎌倉時代(1309年頃) 皇居三の丸尚蔵館収蔵
石川県立美術館で展示
700年の時を超え、鎌倉時代の姿を今に伝える一大絵巻です。鎌倉時代のやまと絵絵巻として最高峰の呼び声も高く、2021年、国宝に指定されています。奈良の春日大社にまつわる神秘的な話が全20巻におさめられ、本展ではそのうち巻八の1巻を、前後期で場面を替えて展示します。
縦41センチあまり、全長約10メートルの画面には、まるで望遠鏡でのぞき込んだかのように、鎌倉時代の信仰や人々の生活が、生き生きと精緻を極めて描かれます。目をひく鮮やかな色彩は、修理の際も補彩などは施さず、鎌倉時代のまま残されました。700年の歳月に耐えた色彩を前に、感嘆せずにはいられません。
さてその修復は、全20巻を2004年度から13か年をかけて行われました。表紙裂や紐(巻緒)は、鎌倉時代の絹がもつ柔らかな風合いを復元するため、純国産種の繭が必要とされ、上皇后陛下がお育てになった蚕「小石丸」の絹糸が使用されました。1871年(明治4年)から皇室伝統となった歴代皇后によるご養蚕ですが、「小石丸」は生産性が低いこと等を理由に飼育の存続が議論されました。しかし平成になって上皇后陛下が引き継ぐ際に、「もうしばらく古いものを残しておきたい」とのご意向が、この品種の飼育を存続させたといいます。正倉院の宝物や本作などの文化財修理、ひいては文化の継承という役割をも担うことになったのです。(石川県立美術館学芸第一課長 前多武志)
(2023年11月17日付 読売新聞朝刊より)
■ 皇居三の丸尚蔵館収蔵品展 皇室と石川―麗しき美の煌きらめき―
【会期】2023年10月14日(土)~11月26日(日)【会場】石川県立美術館、国立工芸館(金沢市出羽町)
【主催】石川県立美術館、国立工芸館、いしかわ百万石文化祭2023実行委員会、宮内庁、文化庁、国立文化財機構
【共催】北國新聞社
【特別協力】紡ぐプロジェクト、読売新聞社、前田育徳会
【問い合わせ】石川県立美術館076・231・7580、国立工芸館(ハローダイヤル)050・5541・8600
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