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2022.9.18

【皇室の美】「昭和度悠紀地方風俗歌屏風」 ご即位彩る琵琶湖の風景

悠紀ゆき主基すき地方――耳慣れないこの言葉は、天皇の即位儀式と深く関わるものだ。新天皇が即位後、初めて神々に食物や酒を供える儀式を「だいじょうさい」と言い、その材料となる新米などを収穫する田(斎田さいでん)は占いにより選ばれる。歴史的な変遷はあるが、現在では京都を基点にして東西の斎田を定めており、東を悠紀地方、西を主基地方と呼ぶ。

ご即位にまつわる一連の儀式(大礼)の終盤には、「大饗だいきょうの儀」という華やかな宴が催される。ここで披露されるのが、悠紀主基地方の名所風俗を詠んだ和歌に基づく二組の屏風びょうぶである。

「大饗第一日の儀 陪宴席」写真
1928年(昭和3年)11月16日撮影 宮内庁宮内公文書館蔵
 奥に「昭和度 悠紀地方風俗歌屏風」が飾られている

その歴史は古く、平安時代以来の伝統がある。昭和の大礼で悠紀地方を描く屏風の作者に選ばれたのは、日本画家の川合かわい玉堂ぎょくどう(1873~1957年)。1917年に帝室技芸員を拝命し、名実ともに画壇の巨匠と言うべき存在だった。日本の美しい風景を情感豊かに描き出すその手腕に、「昭和度 悠紀地方風俗ふぞく歌屏風」制作の大任が託されたのである。

28年1月に依頼を受けた玉堂は、悠紀地方に選ばれた滋賀県を2月下旬から4月にかけて数度取材し、各地でスケッチを重ねている。徹底して写生を重視した玉堂らしい、入念な準備がなされた。

「昭和度 悠紀地方風俗歌屏風」 川合玉堂筆(右隻) 1928年(昭和3年) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 10月12日~30日展示
同(左隻) 同 9月16日~10月10日展示

満を持して完成した本作は、四季の移ろいとともに県内の名所――伊吹山(春)、竹生島ちくぶしま(夏)、瀬田川(秋)、比良山ひらやま(冬)――が右隻から左隻へと色あざやかに展開される。湖国・滋賀県にふさわしく、画面の中心となるモチーフは琵琶湖沿岸の風景とそこに住まう人びとの営みだ。

画面に幾筋も引かれている群青のかすみは、やまと絵の伝統的な表現方法にったもの。写生に基づく的確な描写が古典的様式と見事に融合された、玉堂の栄えある大作と言えよう。

(宮内庁三の丸尚蔵館学芸室研究員 田中純一朗)

◆皇室の美と広島 ―宮内庁三の丸尚蔵館の名品から
【会期】9月16日(金)~10月30日(日) ※会期中展示替えあり
【会場】広島県立美術館(広島市中区上幟町)
【主催】広島県立美術館、広島テレビ、イズミテクノ、宮内庁
【特別協力】文化庁、紡ぐプロジェクト、読売新聞社
【問い合わせ】082・221・6246

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