木版摺更紗はその礎となった佐賀鍋島藩の保護のもとに受け継がれた鍋島更紗の木版と型紙を使った技法の可能性を追い求めた型染めである。着物という日本人の体形と和裁の直線裁という機能性から生まれた様式美の中に「紅花トチノキ」の木に咲き誇る花とそれを引き立てる様に茂った葉をスケッチし文様化する。4種類の手のひらサイズの地型と2種類の上型を木口の版木に線彫りし、墨と弁柄で文様の主要な部分を打ち出し、その後10×12センチ四方の型紙20種類約40枚で色を摺り込む。1500回程の版のくり返しの中に「間と空間」を意識した構成で、「型」から生まれる「形」を新たな「型」としてとらえ、自然から得られるリズムを「型の美」として思い描く。
鈴田 滋人(1954- ) Suzuta Shigeto
佐賀県生まれ。1979年武蔵野美術大学日本画科卒業。1981年父・鈴田照次が鍋島更紗研究をもとに創作した木版摺更紗の染色技法を継承し、身辺の植物を写生して抽象化した文様の木版と多数の型紙を併用した染色表現を現した。幾何学的な意匠を展開させ、空間意識を大胆に反映させた斬新な構成によって着物の造形に個性を発揮している。伝統工芸を主体に活動し、日本伝統工芸展で1996年奨励賞、1998年優秀賞を受賞した。1998年MOA岡田茂吉賞展優秀賞、2003年伝統文化ポーラ賞受賞。2008年重要無形文化財「木版摺更紗」保持者となる。佐賀県鹿島市在住。
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