「花鳥風月」を題材にした九谷焼を制作していた私に転機が訪れたのは、シルクロードのオアシス都市を旅し、悠久の時空に感動した1995年のことでした。現地で目の当たりにした民族衣装が九谷独特の色感に重なり、一生のライフワークと決めました。焼物ですから器物に絵付けをすることから始めましたが、「大きな画面に絵を描きたい」という気持ちが大きくなり、陶額に挑戦するようになりました。
武腰 一憲(1956- ) Takegoshi Kazunori
石川県生まれ。1979年金沢美術工芸大学デザイン科陶磁専攻を卒業し、大樋年朗に師事した。日展を主体に活動し、日展で1997年及び2000年特選を受賞、日本現代工芸美術展でも受賞を重ねた。九谷焼窯元を継承。ウズベキスタンの古都サマルカンドで九谷焼伝統の色に近い鮮やかな青に出会ったことから、その心象の風景を主要な主題として、大きく照らす金色の月の下に居る老人を描くなど、静謐な時空の移ろいを表している。石川県能美市在住。
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