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2023.11.20

團十郎 顔見世で襲名披露 ― 父の思い出「助六」「景清」 京都・南座で

歌舞伎界の大名跡「十三代目市川團十郎白猿だんじゅうろうはくえん」の襲名から約1年。今年〔2023年〕の京都・南座「吉例顔見世かおみせ興行」はその襲名披露公演となる。市川宗家の家の芸・歌舞伎十八番から「景清かげきよ」「助六由縁ゆかりの江戸桜」を披露し、長男・堀越勸玄かんげんが八代目市川新之助を名乗って初舞台を踏む。(編集委員 坂成美保)

顔見世への抱負を語る市川團十郎白猿

團十郎は、10歳代の頃に南座の3階席から、父(十二代目團十郎)が勤める「助六」を見た時のことをはっきり覚えている。花道で傘を広げて見得みえを決める姿に心を打たれ、自然と涙がこぼれた。「でっかいはな、持ってるな」。オーラに圧倒されたという。

その南座に、今度は自分の名を書いた「まねき看板」が上がり、同じ「助六」を勤める。「團十郎の名前の重みは子どもの頃から認識していました。1年たってまだ慣れきってはいない。まねき看板を見上げて、自分のことではないような、父の思い出が懐かしいような、そんな感覚になるような気がします」

市川團十郎白猿の「助六由縁江戸桜」
長男・新之助、長女・ぼたん 共演

父親として、子どもたちの成長も見守ってきた。長男・新之助は、歌舞伎座、博多座に続いて「外郎売ういろううり」を勤める。歌舞伎十八番の演目で、早口言葉の長ぜりふが見せ場になる。「彼は『外郎売』という武器を磨き上げる作業に飛び抜けていて今、人生を謳歌おうかしている。大したもんだなと思う。歌舞伎に積極的に取り組むので、何の心配もない」と太鼓判を押す。

市川新之助の「外郎売」

市川ぼたんの名で、日本舞踊家として活躍する長女も、今回「男伊達花廓おとこだてはなのよしわら」で、團十郎と共演する。「歌舞伎にも女優業にも声優にも興味を抱いて、のびのびと育っている。人との接し方、気配りの巧みさには、私も勝てない」と目を細める。

昼の部は「初めて見る観客を楽しませること」を念頭に、新之助やぼたんの出演作のほか、豪快な荒事の見せ場がある「景清」を並べた。一方、夜の部には「歌舞伎をずっと見てきたファン」を意識して「助六」や、人間国宝・片岡仁左衛門による「仮名手本忠臣蔵・七段目」といった古典の名作を配した。

父親としても、子どもたちの成長を温かく見守ってきた

助六の相手役で女形の大役・揚巻あげまきを、中村壱太郎かずたろうと中村児太郎が役替わりで演じるのも新鮮だ。「襲名披露では大先輩に勤めてもらうことが多い役だが、あえて次世代、新之助たちの世代の揚巻を見つけようと、若い2人に白羽の矢を立てた。未来の揚巻に期待したい」と思いを託した。

〔2023年〕12月1~24日。昼の部は「双蝶々曲輪(ふたつちょうちょうくるわ)日記」「外郎売」「男伊達花廓」「景清」。夜の部は「仮名手本忠臣蔵・七段目」「口上」「助六由縁江戸桜」。(電)0570・000・489。

(写真はいずれも ⓒ松竹)

(2023年11月17日付 読売新聞朝刊より)

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