2021.5.17

歌舞伎と文楽 二つの伝統芸能が共に作る新しい舞台とは

二つの小宇宙-めぐりあう今-


「意外かもしれないが、歌舞伎俳優と文楽人形つかいが一緒の舞台に立つことはほとんどなかった。脚本を書きながら、どんな舞台になるかイメージが浮かばなかったくらい。しかし、きょうの稽古で、見えてきた。想像以上に、新しい世界が生まれそう」

そう語るのは、大和田文雄・日本芸術文化振興会(国立劇場)理事だ。5月22日に東京・半蔵門の国立劇場で披露される特別企画公演「二つの小宇宙-めぐりあう今-」の演目「変化へんげと人間と―羽衣伝説―」の脚本・演出を担当する。

この演目では、歌舞伎俳優の中村雀右衛門さんと、文楽人形遣いの吉田玉男さんがそれぞれ、物語の主人公である天女と伯龍を演じる。歌舞伎俳優と文楽の人形遣いが同じ舞台で「主演」することは、「非常に珍しい」と大和田さんは話す。

人間と人形の大きさの差
稽古をする中村雀右衛門さん(左)と吉田玉男さん(左から2人目)。(5月16日撮影)

日本を代表する伝統芸能である歌舞伎と文楽(人形浄瑠璃)。人形浄瑠璃で初演された「仮名手本忠臣蔵」は、歌舞伎でも演じられ、歌舞伎の代表的な演目となった。文楽の語り手の太夫たゆうが歌舞伎に出演することもあり、両者の関係は疎遠というわけではない。

それでも両者の共演は難しい。最大の理由は、人と人形の大きさの違いだ。

3人で操る文楽の人形は、人形としては大きいが、人に比べるとその差は歴然。「実はどんな舞台になるのかイメージが浮かばなかった」と振り返る大和田さんだが、実際に稽古で両者が同じ空間で演じたところを見て、「サイズの差が違和感にはならなかった。むしろ、物語に没入できる。それでいて、2人が別の世界の住人であることが効果的に見る人にも届く」と手応えを感じた。

脚本・演出の大和田文雄さん

大和田さんが今回の特別企画公演に向け、テーマを決める上で考慮したのは、登場人物の2人が「異世界の住人」であること。そこで、天女と人間の男の羽衣伝説を選んだという。

「羽衣伝説は、能の『羽衣』をはじめ、日本各地に色々なバリエーションの物語がある。今回は、歌舞伎と文楽、そして音楽は雅楽という三つの古典芸能が一緒になる。さらに舞台の演出には、華道、書道、香道とさまざまな日本文化を取り入れた。チャレンジな舞台となるので、ストーリーも新しい解釈で羽衣伝説を書いた」と大和田さん。

歌舞伎と文楽、雅楽……。それぞれ確固たる世界を持った「小宇宙」だが、互いに結びつきあうことで、新しい物語と表現が生まれようとしている。大和田さんは「日常をひととき忘れられる舞台になる」と話している。

国立劇場特別企画公演「二つの小宇宙-めぐりあう今-」は、「変化と人間と―羽衣伝説―」のほか、声明しょうみょうと、コンテンポラリー・ダンスの競演「Bridge」も披露される。

(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)

開催概要

日程:2021年5月22日(土)午後3時30分開演
会場:国立劇場(東京都千代田区)
料金: 1等席6000 円(学生4200 円)、2等席4000 円(学生2800 円)
チケットは、国立劇場チケットセンター 
https://ticket.ntj.jac.go.jp/
電話 0570-07-9900、03-3230-3000(一部IP 電話等)(午前10 時~午後6 時)

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