東京・上野の東京国立博物館での「体感!日本の伝統芸能」展(開幕は延期中)の会場には、国宝「
花下 遊楽図 屏風 」の高精細複製画が展示されています。そこには、もとは疫病退散を祈る芸能だったとされる「風流踊 」が描かれています。ほかにも能や歌舞伎、仏像など、伝統文化は、災厄をはらい、幸福を願う心とともに受け継がれてきました。日本舞踊家の尾上 紫 さんに、日本舞踊への思いについて聞きました。
日本舞踊の根本は、「祈り」だと思っています。人から神様への感謝がベースにあり、歌舞伎を起源に、他の芸能の要素も取り入れて、舞台芸術として進化してきました。奉納の踊りをするときなど、精神が清らかになっていると感じます。
「
新型コロナウイルスの影響で、催し物が難しい状況です。できれば、こういう時こそ、踊りをお見せしたい。芸術を見ることで人とつながることができ、人とつながる実感が励みにもなると思います。
一日も早い収束を願っています。そうしたら皆さんにまた、豊かな気持ちで芸術に触れていただけるでしょう。今、私にできるのは、稽古すること。人に寄り添う気持ちを忘れずに稽古を重ね、その思いを踊りに生かせるよう、精進していきたいと思っています。
◇おのえ・ゆかり 1974年、東京生まれ。尾上流三代目家元、尾上墨雪の長女で、3歳で初舞台。映像作品や舞台で女優としても活躍している。
2020年4月5日付読売新聞朝刊より掲載
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