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2020.4.16

「根本には祈り」 日本舞踊家・尾上紫さんインタビュー

東京・上野の東京国立博物館での「体感!日本の伝統芸能」展(開幕は延期中)の会場には、国宝「花下かか遊楽図ゆうらくず屏風びょうぶ」の高精細複製画が展示されています。そこには、もとは疫病退散を祈る芸能だったとされる「風流踊ふりゅうおどり」が描かれています。ほかにも能や歌舞伎、仏像など、伝統文化は、災厄をはらい、幸福を願う心とともに受け継がれてきました。日本舞踊家の尾上おのえゆかりさんに、日本舞踊への思いについて聞きました。

松本剛撮影
福よ、来い

日本舞踊の根本は、「祈り」だと思っています。人から神様への感謝がベースにあり、歌舞伎を起源に、他の芸能の要素も取り入れて、舞台芸術として進化してきました。奉納の踊りをするときなど、精神が清らかになっていると感じます。

花下かか遊楽図ゆうらくず屏風びょうぶ」に描かれている風流踊は、自由で、開放的ですね。でも、華やかな世界の裏には、病気が深刻だったり、貧富の差が激しかったりと厳しい世界も広がっていたことでしょう。

新型コロナウイルスの影響で、催し物が難しい状況です。できれば、こういう時こそ、踊りをお見せしたい。芸術を見ることで人とつながることができ、人とつながる実感が励みにもなると思います。

一日も早い収束を願っています。そうしたら皆さんにまた、豊かな気持ちで芸術に触れていただけるでしょう。今、私にできるのは、稽古すること。人に寄り添う気持ちを忘れずに稽古を重ね、その思いを踊りに生かせるよう、精進していきたいと思っています。

◇おのえ・ゆかり 1974年、東京生まれ。尾上流三代目家元、尾上墨雪の長女で、3歳で初舞台。映像作品や舞台で女優としても活躍している。

2020年4月5日付読売新聞朝刊より掲載

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