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2020.1.3

令和最初の初芝居!歌舞伎俳優や文楽人形が鏡開き、新春を寿ぐ―あいさつ全文書き起こし

鏡開きをする(左から)尾上菊之助さん、尾上松緑さん、河村潤子・日本芸術文化振興会理事長、尾上菊五郎さん、中村時蔵さん(東京・半蔵門の国立劇場で)

新年を迎え、東京と大阪の劇場で歌舞伎や文楽の公演が始まった。鏡開きも行われ、初芝居を見物する人々でにぎわった。

東京・国立劇場では3日、初春歌舞伎公演「通し狂言 菊一座きくいちざ令和仇討れいわのあだうち」が初日を迎えた。ロビーは、大きな鏡餅や、干支えとの「」の字が書かれた大凧おおだこが飾られ、おめでたい雰囲気に包まれた。

あいさつを求められた尾上菊五郎さんは、酒だるの上に置かれた木づちをマイクと間違えて手に取るギャグを披露して笑いを誘い、「今回のお芝居も初春らしく、序幕から大詰おおづめまでいろいろな趣向が凝らしてございます」と話した。中村時蔵さん、尾上松緑さん、尾上菊之助さんと、「1、2 の 3!」のかけ声に合わせて木づちを振り、鏡開きを行った。(登壇者によるあいさつ全文は、文末に掲載します)

歌舞伎では、鎌倉時代の曽我兄弟のあだ討ちを題材にした作品群「曽我物」を正月公演で上演する伝統があり、今回は四世鶴屋南北による「御国入おくにいり曽我中村そがなかむら」をアレンジしている。 国立劇場では8年ぶりに両花道を使うなど、見どころが盛りだくさんだ。27日まで毎日、出演者が舞台上から手ぬぐいまきを行うほか、7日までは午前11時半から獅子舞も披露される。

歌舞伎座や新橋演舞場、浅草公会堂でも歌舞伎の公演が始まった。

大阪では文楽人形が振る舞い酒

大阪・国立文楽劇場でも3日から初春文楽公演が始まった。

開場に先立ち、劇場前には特設舞台が置かれ、この公演で襲名披露を行う六代目竹本錣太夫しころだゆうさんが「今日が錣太夫の第一歩です。今年はねずみ年ですので、大阪、文楽にお越しくださる方がねずみ算式にどんどん増えて、にぎやかになりますことを願っております。今後とも大阪を、文楽をごひいきください」とあいさつ。第一部の「七福神宝の入舩いりふね」に登場する文楽人形の布袋、福禄寿とともに鏡開きを行い、来場者らに日本酒を振る舞った。近くの黒門市場からは「にらみだい」として縁起物の大きなタイが2匹届けられ、披露された。動画はこちら

来場者に酒を振る舞う文楽人形たち
来場者に酒を振る舞う錣太夫さん
黒門市場から届けられたタイ

公演は、宝船に乗った七福神が胡弓こきゅうや獅子舞などの芸を披露する華やかな「七福神~」で幕開け。吃音きつおんの絵師とその妻の情愛がドラマチックに描かれた「傾城反魂香けいせいはんごんこう」では、錣太夫さんの襲名披露口上が行われ、豊竹呂太夫ろだゆうさんが錣太夫さんとの修業中に起こったユニークなエピソードを披露し、客席を沸かせた。「七福神~」の劇中で錣太夫さんの襲名を祝うのぼり旗が登場したり、ロビーには正月飾りがあしらわれたりと、劇場は新年と襲名を寿ことほぐ華やかなムードに包まれていた。

襲名披露口上を行う(左から)竹本錣太夫さん、三味線の竹澤宗助さん、豊竹呂太夫さん

近くの大阪松竹座でも、歌舞伎の公演が始まった。

国立劇場でのあいさつ全文

尾上菊五郎さん

皆さま、明けましておめでとうございます。初春、初歌舞伎に、例年のごとく、国立劇場に出演させていただきまして、こんなにうれしいことはございません。今回のお芝居も、また初春らしく、序幕から大詰までいろいろな趣向を凝らしてございます。どうか存分に初春歌舞伎を楽しんでいただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

中村時蔵さん

皆さま、時蔵でございます。明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。令和2年、2020年の初春歌舞伎も、めでたくこの国立劇場で一年の幕を開けることができました。大変うれしく思っております。

私はいろんな役、二役やっておりますけれど、役の内容についてしゃべるとお隣の方(菊五郎さん)が怒りますので、見てのお楽しみということでございます。一座みんな序幕から大詰まで一生懸命務めておりますので、どうぞ楽しんでご覧になっていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

尾上松緑さん

明けましておめでとうございます。尾上松緑でございます。初日から賑々にぎにぎしく、皆さんお集まりくださいまして、誠にありがとうございます。いつも通り、毎年通り、国立劇場で初春を迎えられるということで、本当に気合が入っております。私も序幕から最後まで出っぱなしでございますので、一生懸命務めます。皆さんに喜んでいただけるような内容に仕上がったと思っておりますので、どうぞ最後まで楽しんでご観劇ください。どうぞよろしくお願いいたします。

尾上菊之助さん

(一度、壇を下りて)新年のごあいさつの前に、昨年12月8日に私、けがをいたしまして、(新橋演舞場で上演した歌舞伎「風の谷のナウシカ」の)8日の夜の部のチケットを買っていただいた方、ご覧いただけなくて本当に申し訳ございませんでした。そして、一部演出を変更して途中までさせていただきましたけれども、途中からだいぶ回復してまいり、演出もだいぶ元通りになりまして、千穐楽せんしゅうらくまで務められましたこと、これも本当に皆さま方のおかげと心より御礼を申し上げます。

けがの具合につきましては、千穐楽が終わってから病院に行きましたところ、骨も無事に付いておりまして、あとはリハビリをしてちゃんと動くように、これからじっくりとリハビリを心がけてまいりたいと思っている次第です。まずはご報告をさせていただきたいと思っておりました。

(改めて登壇して)新年明けましておめでとうございます。今年もこの国立劇場で新年を迎えられましたことを、本当に幸せに思っております。今年、私は白井権八を務めさせていただいております。なぜかこのお芝居の趣向では、権八と小紫が両方出てきまして、小紫も私が演じるという、途中で権八が女になるという趣向になっておりますので、(“ネタバレ”に「ピピピピ!」と時蔵さんがツッコミ)まあ、筋といいますか、ご趣向を楽しんでいただくということで、いろんな趣向が詰まっておりますし、初春のお正月気分を味わっていただければと思っております。

昨年も古典歌舞伎を一つ一つ大事に務めさせていただきまして、今年もその心がけを忘れることなく、そして新しいことがあれば、しっかりひるまず挑戦していきたいと思っておりますので、どうぞ1年間よろしくお願いいたします。

日本芸術文化振興会 河村潤子理事長

新年明けましておめでとうございます。皆さまには、令和初めての新春をお健やかにお迎えになられたことと存じます。本日は国立劇場初春歌舞伎公演、初日に早くからご来場賜り、誠にありがとうございます。本年も、尾上菊五郎さんを中心とする一座をお迎えすることができました。今年の初芝居は、「菊一座令和仇討」を上演いたします。国立劇場では8年ぶりとなる両花道を使い、様々な趣向を盛り込んで、お正月らしい華やかな舞台になっておりますので、どうぞご期待ください。また、幕間まくあいには、獅子舞や曲芸などの催しもございます。どうぞ初春の国立劇場をごゆっくりお楽しみください。本年もごひいきのほど、何とぞよろしくお願い申し上げます。

(読売新聞紡ぐプロジェクト事務局 内田淑子、沢野未来、写真も)

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