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2020.3.19

【沖縄・組踊】首里城への感謝胸に新作上演へ  恋愛と孝行の間で揺れる恋人描く

沖縄の伝統演劇・組踊くみおどりの新作が3月21日、沖縄県浦添市の国立劇場おきなわで上演される。昨年の首里城(那覇市)火災で沖縄が悲しみに包まれるなか、作・演出を手がける同劇場芸術監督の嘉数かかず道彦さん(40)は、「琉球芸能を育んだお城への感謝を胸に公演に臨みたい」と話している。

嘉数道彦さん

組踊は琉球王府が中国の使節を歓待するため創作した歌舞劇で1719年に首里城で初演された。初演300年を記念した首里城公演を2日後に控えた昨年10月31日の早朝、炎を上げる正殿をテレビで見て絶句した。組踊関係者にとって首里城は「聖地」だ。それでも「いかに大きな存在だったかというのは失って初めて気づいた」と言う。

那覇市生まれ。4歳で琉球舞踊を始め、沖縄県立芸術大で組踊を専攻、2013年に33歳の若さで劇場の芸術監督に起用された。学生時代に嘉数さんを指導した組踊立方たちかた(役者)の人間国宝、宮城能鳳のうほうさん(81)は、「若くして要職についたが、おごり高ぶることはまったくなく、誠実な人柄。それは舞台でも示されており、素直な自然体の演技が素晴らしい」と評価する。

芸術監督として古典のほか、自ら台本を手がけた新作の上演に取り組んできた。今年2月15日に首里城公園で行われた首里城復興祈念公演では、自ら古典「二童敵討にどうてきうち」の舞台に立ち、優美な所作を披露した。観客から復興を願う声が多数寄せられ、「勇気づけられ、琉球文化を守り伝える思いを新たにした」と言う。

稽古で出演者を指導する嘉数さん(奥)(国立劇場おきなわで)

今回上演される「はる時雨しぐれ」は、文化芸術の祭典「日本博」の事業。忠孝を主題とした作品が多い古典に対し本作は、王国時代の琉球を舞台に恋愛と孝行とのはざまで揺れ動く恋人たちを描くという、現代人の感覚に合う物語とした。

「いとしい人と一緒になるために親にそむけるか。人と人とのつながりが薄くなっている現代だからこそ、親しい人との絆が持つ意味を問いかけていきたい」

(読売新聞西部本社文化部 帆足英夫)

(2020年3月19日付読売新聞夕刊より掲載)

国立劇場おきなわの公演案内はこちら

https://www.nt-okinawa.or.jp/performance-info/detail?performance_id=1991

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