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2020.2.6

オペラや女優、フラメンコも登場…「かぶく心」を大切に 「システィーナ歌舞伎」の10年

片岡愛之助さん

バチカンの「システィーナ礼拝堂」の壁画や天井画を陶板で再現した「大塚国際美術館」(徳島県鳴門市)の「システィーナ・ホール」は、ミケランジェロが描いた聖書の世界を堪能できる人気スポットだ。この荘厳な空間で行われる「システィーナ歌舞伎」が、今年で10年目を迎えた。伝統芸能にオペラやフラメンコなどが加わる和と洋のコラボレーションとして注目され、今年は、第三回から毎年出演している片岡愛之助さんが織田信長に挑む「NOBUNAGA」(2月13~16日)が上演される。今回もどのような仕掛けで我々観客を驚かせてくれるのだろう。

試行錯誤の10年

システィーナ・ホールは、間口約19メートル、奥行約40メートル、高さ約16メートルの壮大な空間に、旧約聖書の「創世記」と新約聖書の「最後の審判」の世界が描かれている。2018年末のNHK紅白歌合戦で歌手の米津玄師さんが歌った場所としても話題を集めた。

制作会見に出席した愛之助さんは「壁画が力を持っているような、不思議な空間。難しいのは音響で、生音とSE(効果音)があり、どこにスピーカーを置けばいいか、毎回試行錯誤している」と明かす。

ここで上演されるシスティーナ歌舞伎では、2009年の第一回以来、毎年新作を発表してきた。神話を元にした「スサノオ susanoo」(第二回)、オペラ「フィガロの結婚」を題材にした「満月阿波噺あわのよばなし フィガロ」(第五回)や、フランスの説話がモチーフの「La Belle et la Bête 美女と野獣」(第七回)など、ユニークな作品が並ぶ。

過去には、宝塚歌劇団元トップスターの大和悠河さんや彩輝なおさん、京劇俳優らも出演。音楽には伝統的な長唄や義太夫だけでなく、クラシックや賛美歌なども取り入れ、劇中でフラメンコが披露されるなど、従来の歌舞伎にはない意欲的な演出が行われてきた。

双子の信長と本能寺の変

中には「GOEMON 石川五右衛門」(第三回)のように、別の劇場で再演される作品も出始めた。会見に参加した松竹の安孫子正副社長は、「和と洋のコラボレーションを意識した作品作りで、歌舞伎界へ大きな刺激を与えている。大劇場で再演されると、より多くのお客様に見ていただき、親しまれていく。今後も再演を意識して(システィーナ歌舞伎の)公演を行いたい」と評価する。

「新しい作品を作る場合、どう再演していくか意識することが大切。今度の信長もいつも以上に力強く考えていきたい」と語る安孫子副社長。左は作・演出の水口一夫さん

今回上演される「NOBUNAGA」は、戦国武将の織田信長を描いた作品で、作・演出を務める水口一夫さんによると、信長は双子という設定。「信長は比叡山焼き打ちや本願寺を攻める一方、花押かおうに平和を象徴する麒麟きりんを書くなど、平和な世を作ろうとしていた。平和を目指す信長と、人を殺す信長、二人の信長がいたという設定で、両方を愛之助さんに演じていただく。なぜ信長が本能寺で殺されなければいけなかったのかもテーマだ」とする。愛之助さん、中村壱太郎さん、上村吉弥さんに加えて、俳優の今井翼さんも出演する。

歌舞伎に境界線なし
共演者について「壱太郎さんは赤ちゃんの時から見ていて、家族みたいな感じ。何も言わないでもわかってくれる仲です。吉弥さんは怖いおばあさんも、美しい女形も、立役もどんな役もこなされる 。本当に心強い、『チーム上方』という感じですね」と語る愛之助さん

女性が出演したり、西洋の音楽を使ったりなど、従来の歌舞伎のイメージを覆すシスティーナ歌舞伎。愛之助さんは「どこまでが歌舞伎かという境界線はない。すべてが歌舞伎です。古典という柱があり、復活歌舞伎、コラボレーション歌舞伎、新作といった色々な柱があり、それを覆う傘が歌舞伎なんだと思います」と思いを語る。

「歌舞伎はそもそも現代劇で、時代がたった今だから、我々はカツラをかぶって演じているんです。(創始者とされる出雲の阿国おくにがかぶき踊りを披露した)1603年当時、歌舞伎は最先端のものでした」と成り立ちを語る。「私は、これが面白いだろう、新しいだろうという『かぶく心』を大切にしなさいと言われてきました。歌舞伎は常に進化している。古典を踏まえた上で、挑戦し、新しいものをつくるのが歌舞伎の発展につながると思っています」と意欲を見せていた。

公式サイトはこちら(チケットは完売)

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