日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト
重要文化財「方丈障壁画」(長沢芦雪ろせつ筆)45面のうち「群雀図」(成就寺蔵)=和歌山県立博物館提供

2026.1.25

【修理助成 全国に広がる5】重要文化財「方丈障壁画」長沢芦雪ろせつ筆(和歌山・成就寺蔵)

2026年度「紡ぐプロジェクト」修理助成事業

2026年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業は、宮城県から重要文化財「瑞巌ずいがん寺本堂墨絵の間障壁画」(瑞巌寺蔵)、福岡県から同「不空羂索けんさく観音立像」(観世音寺蔵)、高知県から同「大威徳明王だいいとくみょうおう像ほか12件」(竹林寺蔵)が申請された。修理助成対象となった計7件はいずれも劣化が進み、絵画3件は本紙の亀裂やのりの劣化、仏像3件は漆箔しっぱく層の浮き上がりや虫食いなどが見られる。貴重な文化財を後世に伝えるため、素材を調査し、最善の修理方法を検討したうえで、1年~数年の作業に着手する。

近年、国内外で人気を集めている長沢芦雪ろせつ(1754~99年)が1786~87年に師である円山応挙の名代として、和歌山県南部に滞在した際に制作した障壁画。制作年代が明らかな芦雪の希少な作品として知られる。

壁画は山水や人物、草花、動物といった幅広い画題。全て一人で描いたことから、芦雪による空間デザインの意図をうかがい知ることができる貴重な作品だ。障壁画は45面あり、2020年度から「紡ぐプロジェクト」の助成を受けて修理が続けられている。26年度からは、「群雀図」「曹孟徳図」「唐獅子からじし図」計16面が対象となる。

「曹孟徳図」
「唐獅子図」
スズメ、巧みに軽やか

「群雀図」は堂内の天袋を飾った襖絵で、12羽のスズメが篠竹しのだけにとまる様子がリズミカルに描かれる。並んで正面を向いたり、体を逆さにして下をのぞいたりするスズメが巧みな墨の筆致で軽やかに表され、愛らしい動物表現で知られる芦雪の画力が発揮される。躍動感のある獅子が描かれた「唐獅子図」、中国・魏の始祖である曹操と兵士が描かれた「曹孟徳図」の画題はいずれも芦雪の他の作品にはない。

寺の建具として日常的に使用されていたため、全体的に破れや汚損など傷みが激しく、虫食いも目立っている。襖の縁から絵を取り外した上で、本紙の剥落止めや裏打ちなどを行い、組み立て直す。失われていた「群雀図」の引き手金具も新調する。30年3月までに修理を終える見通しという。

(2026年1月11日付 読売新聞朝刊より)

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