今年〔2025年〕は戦後80年。戦争体験者が減少していく中、戦禍を伝える当時の建造物や遺跡の重要性が増しています。生々しい傷痕は強いメッセージを発しています。今月の「紡ぐプロジェクト」特別紙面は、先の大戦に関連した日本各地の文化財を紹介します。災いから逃れ、または再建されて人々を励ましたものもあります。現状と次世代への継承に向けた課題を見つめます。
首都・東京では度重なる空襲で、貴重な文化財が失われた。徳川将軍家の
一方、増上寺の表の顔でもある巨大な「
寺宝の中でも特に重要だったのが初代将軍・家康が収集し、増上寺に寄進した仏教経典群「
増上寺で教務部長を務める袖山栄輝執事(61)は「平和と安寧を願う家康公ゆかりの仏教聖典をこれからも受け継いでいきたい」と話す。
7月1日には記念法要が営まれ、八十九世の小澤憲珠法主が「世界の記憶」への登録を報告した。記念式典では、小説家で印刷博物館(東京都文京区)館長の京極夏彦さんが「デジタルメディアと大蔵経」と題して講演し、「文化の最大の敵は天災と戦争。それでも三大蔵は残されてきた。今はデジタル技術でアーカイブ化されており、次代につなぐ足がかりになる」と話した。
三大蔵は10月7日から九州国立博物館(福岡県太宰府市)で開かれる特別展「法然と極楽浄土」で展示される。
(2025年8月3日付 読売新聞朝刊より)
0%