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左:「秋冬花鳥図」 英ロンドン・大英博物館蔵
大英博物館が所蔵する「秋冬花鳥図」の高精細複製品
©The Trustees of the British Museum(2017)
右:「春景花鳥図」 青森・宮越家蔵
宮越家が所蔵する「春景花鳥図」=中泊町教育委員会提供

2025.6.5

対のふすま絵 150年ぶり「再会」— つながる絵柄 季節の移ろい描く

青森県中泊町の旧家・宮越家にあるふすま絵「春景花鳥図」が、「対」であることが昨年〔2024年〕判明した「秋冬花鳥図」の高精細複製品と並んで、同家の離れで公開されている。春季公開のチケットは完売したが、秋にも公開が予定されている。

「秋冬花鳥図」の本物はロンドン・大英博物館が所蔵。1870年頃、「春景花鳥図」とともに、当時の所蔵先だった奈良県の談山神社から流出し、離ればなれになったとみられており、関係者は約150年ぶりの「再会」を喜んだ。

キヤノンが撮影 職人が仕上げ

「秋冬花鳥図」の複製品は、キヤノンとNPO法人「京都文化協会」が取り組む「つづりプロジェクト(文化財未来継承プロジェクト)」の一環で2017~18年に制作された。キヤノンが「秋冬花鳥図」をデジタルカメラで撮影し、同社の技術で色合いなどを再現。さらに、職人が表装や金箔きんぱく貼りなどの作業を行った後、談山神社に寄贈されていた。

二つが対であると判明したのは昨年のこと。元京都国立博物館主任研究員の山下善也さんが宮越家のふすま絵の画像を見て、1987年に東京国立博物館で展示された大英の花鳥図と描き方などが似ていることを思い出した。調査の結果、大英の花鳥図の右側と、宮越家所蔵の花鳥図の左側がつながり、季節の移り変わりを表現していることが分かった。400年以上前の狩野派の作品と推定される。

京都文化協会の田辺幸次・代表理事は「大英博物館でも見られないことが多い作品が複製で再現されて戻ってきて、並んで展示されるのは意義深い」と話していた。

秋の公開は、9月26日~11月2日。チケット販売は、9月9日からの予定。

(2025年6月1日付 読売新聞朝刊より)

宮越家の離れで、二つのふすま絵が並んで公開された(青森県中泊町で)=キヤノン提供

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