茶道の月刊誌「なごみ」(淡交社)で今年1月から担当している連載を通じて、茶の湯と出会いました。僕がお茶会を主催する亭主となり、その心得を学んでいく企画です。
各回、「炭の火を熾す」「菓子を誂える」「炉開きを迎える」などのテーマに沿い、着物を着て茶室で実演しながら茶の心やもてなし方を学びます。
もともと神社や仏閣が好きで、ご朱印集めを8年近くやっています。10代の頃は1人で京都を弾丸で訪れるようなこともしていました。20代後半になり、「趣味の幅を広げたい」「なじみのないことに挑戦したい」と考えていた時に連載の話をいただきました。和の世界をもっと知りたいという思いが強くなりました。
お茶というと最初はちょっと堅苦しいイメージがありましたが、亭主の心得を一つずつ学ぶうちに、季節の移り変わりをとても大事にしていることに興味を引かれました。掛け軸やお花、お菓子の全てが、四季を意識して用意されます。
招いた人においしいお茶を飲んでもらうため、万全の準備とこまやかな心配りが必要です。相手を思いやるおもてなしの心は、僕らの音楽活動にも通じます。
コンサートは自分たちで選曲し、曲順も演出も考えます。メンバーで細かいところまで打ち合わせを重ね、最後まで妥協せず本番を迎えます。僕はといえば、喉の状態に常に気を配ります。普段から香辛料の強いものは食べないようにし、寒い時期は加湿器をつけて空気の乾燥に注意します。
だからこそ、コンサートに込めた思いが皆さんに届いた時はうれしい。お茶とライブは静と動で正反対のようですが、おもてなしの心を最も大切にするという点は同じです。
着物はとても心地がいいですね。普段は首回りが緩く、パンツもラフなものが多いので、圧迫感があるのかなと思いましたが、そんなことはなくて。季節に合わせることも大切。夏に薄めの生地で清涼感のある色みの物を身につけると、さわやかな気分になりました。着る物で、自然に心の色がすっと変わるのです。正座にも慣れて、長時間座ってもしびれなくなりました。
時間がある時、自宅でお茶を点てることもあるんです。舞台やドラマの前にはお酒を控えるので、抹茶をおいしくいただきます。忙しい日常の中で、心安らぐのどかな時間が好きです。将来、マイホームを持つことがあれば、茶室がほしい。そんな憧れもあります。
すぐに結果が出ることは続きません。好きなことを極めたい。芸能界で活動を17年続けられているのも、好きという気持ちがあるからです。歌も舞台もドラマも「好き」が原動力になり、向上心につながっています。お茶の世界も、もっと学んで深めたいと思います。
(聞き手・渡辺彩香)
京本大我(きょうもと・たいが) 東京都出身。27歳。SixTones(ストーンズ)のメンバー。日本テレビ系の連続ドラマ「束の間の一花」で単独初主演を務める。主題歌の「ふたり」を収めた8枚目シングル「GoodLuck!/ふたり」が発売中。ジャニーズ事務所所属。父親は俳優の京本政樹さん。
(2022年11月18日付 読売新聞夕刊より)
特別展「京に生きる文化 茶の湯」
(京都国立博物館)
公式サイトはこちらから
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