「蓬莱山」とは中国の伝説の神仙境の一つ。東の海に浮かぶ、仙人の住むという不老不死の霊山である。おめでたい題材のため、日本でも美術品にたびたびその姿が描かれた。この「
制作は東京美術学校(現・東京芸術大学)に委嘱され、広島県出身で同校卒業生の漆工家・
紫水は1896年から7年間、奈良や京都を中心とした古社寺の宝物調査を行っており、この書棚はその成果を発揮して、正倉院宝物に範を得て制作された。棚の形は正倉院宝物のうち二つの
また図様は同じく正倉院宝物の山水が描かれた箱の文様を参考に再構成し、その表現方法に奈良時代の加飾技法である「
さて古代の技法再現に挑戦した書棚を改めて見てみよう。透明感のある黒漆地に粗い金粉が乱反射し、蓬莱山はやわらかく上品に輝く。その幻想的な姿は、まさしく海辺に浮かぶ蓬莱山を目の当たりにしているかのようである。古典的でおおらかな模様は古代の雰囲気がよく再現されており、
この書棚制作を機に紫水は母校である東京美術学校で
(宮内庁三の丸尚蔵館学芸室研究員 木村真美)
◆皇室の美と広島 ―宮内庁三の丸尚蔵館の名品から
【会期】10月30日(日)まで ※会期中展示替えあり
【会場】広島県立美術館(広島市中区上幟町)
【主催】広島県立美術館、広島テレビ、イズミテクノ、宮内庁
【特別協力】文化庁、紡ぐプロジェクト、読売新聞社
【問い合わせ】082・221・6246
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