【修理の時、来たる２】平安の仏画 彩色の温かみ ― 国宝「聖徳太子及および天台高僧像こうそうぞう（兵庫・一乗寺蔵）」

2024年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業は、兵庫県から国宝「聖徳太子及および天台高僧像こうそうぞう」（一乗寺蔵）、三重県から重要文化財「聖徳太子勝鬘経しょうまんぎょう講讃こうさん図（西来寺せいらいじ蔵）、福井県から同「八相はっそう涅槃ねはん図」（劔つるぎ神社蔵）が初めて申請されるなど地域的な広がりを見せ、過去最多の9件に決まった。いずれも劣化が進み、特に絵画や文書は折れや染みなどが顕著という。貴重な文化財を後世に伝えるため、素材を調査し修理方法を検討したうえで、1年～数年の作業が始まる。

インドや中国、日本の天台宗関連の高僧9人と、同宗の根本経典「法華経」を重視した聖徳太子を描いた全10幅。温かみのある彩色とユニークな造形が特徴的で、現存数が極めて少ない平安時代（11世紀）の仏画を代表する作品として評価が高い。

いずれも縦約130センチ、横約75センチで、坐像ざぞうや立像、正面向きなど様々な高僧の姿が描かれる。柔らかな輪郭や豊かな表情で親しみやすい印象を与える。聖徳太子らを描いた一部の絵画に残る賛文は、かつて比叡山延暦寺にあった堂内の壁画に記されたものと一致し、本作を制作する際の参考になった可能性があるという。

画面にはきつい折れや欠失、顔料の剥落はくらくといった激しい損傷がみられる。1902年（明治35年）の日本美術院による前回修理から120年以上が経過し、早急な本格修理が求められている。

（2024年1月7日付 読売新聞朝刊より）