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2023.11.13

【首里城復元 かつての姿へ・2】沖縄の伝統技術、材料 結集

首里城正殿などには琉球の「手わざ」が至る所に施されていた。外壁、柱は漆塗りの上に金箔きんぱくなどで飾り、屋根の「龍頭棟飾りゅうとうむなかざり」は陶磁、龍柱は石の彫刻、国王の座所は華やかな織物で飾っていた。今回の正殿復元工事は、地元沖縄で継承する伝統技術を生かし、次世代に伝えていく取り組みも合わせて進めている。柱に使う材木を確保するため100年後を見据えた植林活動も始まった。被災した美術工芸品の修理へ人材確保も必要だ。首里城復元は、琉球の美を守り継ぐための「未来への投資」でもある。

礎石を砕いて「ニービの粉」を作る=内閣府提供

首里城正殿などには琉球の「手わざ」が至る所に施されていた。外壁、柱は漆塗りの上に金箔きんぱくなどで飾り、屋根の「龍頭りゅうとう棟飾むなかざり」は陶磁、龍柱は石の彫刻、国王の座所は華やかな織物で飾っていた。今回の正殿復元工事は、地元沖縄で継承する伝統技術を生かし、次世代に伝えていく取り組みも合わせて進めている。柱に使う材木を確保するため100年後を見据えた植林活動も始まった。被災した美術工芸品の修理へ人材確保も必要だ。首里城復元は、琉球の美を守り継ぐための「未来への投資」でもある。

2019年10月31日の火災から1か月余、政府は12月には首里城復元に向けた基本的な方針を決定、正殿の工事計画などに着手した。20年3月、防火対策の強化や材料調達の方針など盛り込んだ工程表をまとめ、木材の調達、現場を覆う素屋根すやねの整備などを進め、今年9月に正殿の復元工事が始まった。

正殿は木造重層3階建ての入母屋いりもや造りで、延べ面積は約1200平方メートル。内閣府沖縄総合事務局が復元工事、沖縄県が一部部材を調達するなど連携して進める。同事務局首里城復元整備推進室の勝美直光副室長(建設専門官)(34)は「現在は柱やはりを組み立てる工事が進んでいるところ。おおむねスケジュール通りです」と26年の完成を目指す。

県産材の確保のため計画的に植林も進めるという=沖縄県提供

県は並行して正殿の建物の部材を製作中だ。「首里城復興基金」に寄せられた55億円をあて、県内で継承されている伝統技術を活用する方針で、屋根の上の龍頭棟飾や正面の大龍柱などは、陶芸や石彫職人が作業にあたる。

14世紀ごろ創建の首里城は、これまで5回、火災や戦禍などで失われた。「令和の復元」は、1709年に焼失し15年に再建したが、太平洋戦争で失われた正殿の姿をモデルにするという。

当時の材料、色、大きさを確認したのが、国宝「琉球国王尚家関係資料」(那覇市歴史博物館蔵)だ。資料をもとに県産のオキナワウラジロガシなどの木材、外壁に塗る顔料には、名護市周辺で取れる「久志間切くしまぎり弁柄べんがら」を用意した。

「資料には本土のものを使ったら高くついたので、今後は久志の弁柄を用意すべし、という記載がある。県内のどこで取れるのか、調査を重ねた」という。

工事のスタートとともに、素屋根の内部に「見学エリア」を設け、木材加工場や建設作業の様子を間近で見られるようにした。さらに「焼失した正殿の礎石を粉末にして、漆塗りの原料『ニービの粉』を作るなどボランティアには、延べ約4万6000人の参加がありました」(勝美副室長)。多くの人の思いが首里城の復元を支えている。 

(2023年11月4日付 読売新聞朝刊より)

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