紡ぐプロジェクトによる2021年度修理助成事業で、対象となった重要文化財2件の進捗状況や今後の修理方針を確認する協議が10月に京都で行われた。コロナ禍でも着々と作業が進んでいることが報告された。
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「奇想の画家」として知られる長沢芦雪が描いた重要文化財「方丈障壁画 長沢芦雪筆」(45面、和歌山・成就寺蔵)。このうち今年度の修理対象となった「花鳥群狗図」など8面のふすま絵について、作業の状況と今後の修理方針を話し合う協議が10月13日、京都国立博物館の文化財保存修理所で行われた。
水を噴霧するクリーニングによりシミの汚れが軽減されたほか、引き手部分の下の本紙に緑色の彩色が残っていたことが確認された。「墨画と思われた絵に彩色が施されていたことは今まで気がつかなかった」(大崎克己住職)といい、画本来の姿を想像させる手がかりになりそうだ。
中国の詩人を題材にした「林和靖図」は、過去の応急的な修理で画面に描かれた枝の部分に補修紙があてられ、後から筆も足されている。この補筆とオリジナルとは線の勢いなどに質的な違いがみられること、補修紙の下に芦雪の筆が残っていることなどから、補修紙を取り除くことにした。
修理は2022年度にかけて行われ、裏打ちによる補強や下地の新調などが進められる予定だ。
(2021年12月8日読売新聞から)
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