2022年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業は、いずれも重要な国宝や重要文化財など6件が新規に決まった。このうち長谷川等伯の手による重文のふすま絵を紹介する。
重文 山水図襖 (長谷川等伯筆 京都・隣華院蔵)
ところどころ金色の絵の具で霞をあらわした背景に、墨で山や樹木、岩、人物などが描かれている。俗世から離れたような風景は、理想郷だろうか。
妙心寺の塔頭・隣華院で、方丈(客殿)に飾られた長谷川等伯のふすま絵。豪華さと上品さを兼ね備えた山水図で、部屋の東側から時計回りに「春夏景」「夏景」「秋夏景」「冬景」と、四季の巡りを感じさせる。
1599年、豊臣秀吉の家臣・脇坂安治が寄進して寺が創建された際に制作された。中国・南宋の画家で、日本の水墨画に大きな影響を与えた馬遠や夏珪らの様式を踏まえた描法で、等伯の中でも重要作と位置づけられる。
ふすま絵は長年、外気にさらされ、温度変化の影響を受けやすい。絵の一部で亀裂が生じ、絵の具の層が浮き上がるなど劣化が進んでおり、2017年から京都国立博物館で保管されてきた。
■ 修理のポイント
今回は4年がかりで、等伯のふすま絵など計16面を本格的に解体修理する。墨や絵の具の剥落止めや、古い肌裏紙の除去、断裂部の補強などを行う。400年の歳月を重ねた風合いも残しながらの作業となる。
(2022年1月9日読売新聞から)