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2023.7.5

【修理リポート】四天王寺「扇面法華経」 絵の具定着 色彩が鮮明に

国宝「扇面法華経」 雲母や絵の具の剥離が目立たなくなった

四天王寺(大阪市天王寺区)が所蔵する国宝「扇面法華経」のうち、妙法蓮華経の「巻第一」と「巻第六」の修理方針を協議する専門委員会が6月、京都国立博物館(京都市東山区)で開かれた。

平安時代後期(12世紀)の作で、扇形の冊子に、やまと絵で貴族や庶民の暮らしが活写され、法華経が記されている。修理を担当する「岡墨光堂」の小笠原具子ともこ・修復部長が進行状況を説明した。

2つの冊子は解体して1枚ずつ分離。紙に塗られた粉状の鉱物「雲母きら」や絵の具、墨の剥落はくらくを防ぐため、接着剤となるにかわの水溶液を差し込んだ。高知県立紙産業技術センターに依頼した検査で、紙は米粉とみられる成分が含まれた楮紙こうぞしだったことも報告された。

修理が進み色彩が鮮明になった

四天王寺の南谷恵敬執事長(70)は「絵の具が定着し、色彩が鮮明になった」と喜んでいた。今後は冊子に戻す上で彩色部分を傷めない保存方法を検討するという。

紡ぐプロジェクトとは

国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

(2023年7月2日付 読売新聞朝刊より)

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