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2023.7.4

【修理リポート】六道珍皇寺「薬師如来坐像」 130年ぶり修理へ 搬出完了

「薬師如来坐像」を運び出す(京都市で)=川崎公太撮影

六道珍皇寺ろくどうちんのうじ(京都市東山区)所蔵の重要文化財「薬師如来坐像ざぞう」が5月、130年ぶりの修理のため、京都国立博物館(同市東山区)の文化財保存修理所へ運び出された。

「六道さん」の名で親しまれ、盆に多くの参詣客が訪れる。本尊は1909年に当時の国宝に指定。普段は収蔵庫(薬師堂)に安置され、年に何度か開帳する。漆箔しっぱくの浮き上がりが目立ち、1893年以来の修理となる。

修理に先立ち、文化庁が内部を調査。これまでは頭部のみが古く、残りは後世の補作とみられていたが、平安時代に一材から彫り出した可能性が高いと判明した。修理を担当する「美術院」の技術者が薄い紙やさらしで包み、慎重に薬師堂から運び出した。

坂井田良宏住職(76)は「修理は先代からの悲願で、重荷が取れた思い。美しいお姿で戻られるのが今から楽しみだ」と期待している。

紡ぐプロジェクトとは

国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

(2023年7月2日付 読売新聞朝刊より)

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