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2024.2.9

【修理リポート】重要文化財「山水図襖」(京都・隣華院蔵) 長谷川等伯筆 ― 補修紙 現状維持を基本に

「紡ぐプロジェクト」修理助成 熟議、慎重な作業続く

補彩の進め方などを協議した

「紡ぐプロジェクト」が助成する文化財の修理が順調に進んでいる。現在の姿のまま後世に伝えるべく、試行錯誤を重ねながら慎重な作業が続く。西福寺(大阪府豊中市)の伊藤若冲筆「蓮池図」は、この春にも修理完了を迎える。草堂寺(和歌山県白浜町)の「障壁画」の下張りからは古文書が新たに見つかった。

隣華院(京都市右京区)所蔵の重要文化財「山水図ふすま」(長谷川等伯筆)は、2022年度から、20面のうち「春夏景」4面の修理を始めた。全体にクリーニングを施して、本紙は剥落はくらく止めによって墨などを安定させた。

この後、傷みが少ない1面から本格的な修理に着手し、大きく欠損した部分に当てられていた補修紙を、周囲となじませるため整えた。

昨年〔2023年〕11月には、京都国立博物館の文化財保存修理所で所蔵者、「修美」の修理担当らが、残る3面をどの程度補彩すべきかなどを協議した。金の粉末をにかわでといた「金泥きんでい」が、本紙と過去の修理部分にまたがって塗られ、その上に墨で風景が描かれているため、新たな補修が目立つおそれがあるとわかった。

現状維持を基本に、以前に修理した補修紙は残し、新たな補修には、画面全体がなじんで見える程度に補彩する方針だ。

(2024年2月4日付 読売新聞朝刊より)

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