日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2023.6.9

【修理リポート】重要文化財「方丈障壁画」(和歌山・成就寺蔵) 芦雪作 解体し紙貼り替え 

状態を点検する職員

和歌山県串本町の成就寺が所蔵し、県立博物館が保管する長沢芦雪作・重要文化財「方丈障壁画」45面のうち、「林和靖図りんなせいず」3面と「草花・鳥図」1面のふすま絵が〔2023年〕5月、修理を担当する「松鶴堂」へ運び出された。

芦雪が師・円山応挙の名代として、1786~87年に紀南地域を訪れた際に制作された。花鳥や人物など幅広い題材が描かれ、30歳代前半の芦雪の技量が存分に発揮されている。日焼けや虫食いによる傷みが進み、他館での展示はできない状態で、解体して紙の貼り替えなどを行う。

この日、学芸員らが作品の状態を確認した後、注意深く梱包こんぽうして搬出した。今年度中に修理を終える予定で、立ち会った大崎克己住職(77)は「ありがたい修理の機会をいただいた。仕上がりを楽しみにしたい」と話した。

紡ぐプロジェクトとは

国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

(2023年6月4日付 読売新聞朝刊より)

Share

0%

関連記事