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2026.1.16

【修理リポート】国宝「聖徳太子および天台高僧像」(兵庫・一乗寺蔵)― 表と裏で描写異なる箇所判明

裏打紙を除去した国宝「聖徳太子及天台高僧像」の裏面に見入る一乗寺の太田實秀住職(左から2人目)ら

一乗寺(兵庫県加西市)が所蔵する仏画、国宝「聖徳太子および天台高僧像」について同寺、文化庁、兵庫県、加西市の担当者が昨年〔2025年〕10月28日、奈良国立博物館文化財保存修理所(奈良市)で今後の修理方針を協議する会議を開いた。作品を保管する博物館の担当者らも参加した。

作品は2024年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成対象に選ばれ、28年度までの5年計画で修理を進めている。インドや中国、日本の天台宗関連の高僧9人と、同宗の根本経典「法華経」を重視した聖徳太子を絹地に描いた全10幅。温かみのある彩色とユニークな造形が特徴で、平安時代(11世紀)の仏画を代表する作品として評価が高い。いずれも縦約130センチ、横約75センチ。坐像ざぞうや立像、正面向きなど様々な姿の高僧が描かれている。

1902年(明治35年)の日本美術院による前回修理から120年以上が経過。経年劣化により画面には強い折れや絹地の欠失、顔料の剥落はくらくといった激しい損傷が確認され、早急な本格修理が求められていた。

この日は、10幅のうち24年度から修理に着手した「聖徳太子」「龍樹」「慧思えし」「湛然たんねん」「最澄」「円仁」の6幅について、修理業者「文化財保存」(奈良市)の担当者が、古い裏打うらうち紙を除去した作品の裏面を示しながら、これまでの経過を報告。オリジナルを表側から塗りつぶした補彩が多いため、表面と裏面で、描写が異なる箇所があることなどが新たに判明した。また2月までに欠失箇所に絹を補い、作品の裏面にこうぞ紙を直接貼る肌裏打ちを行う修理工程が確認された。

太田實秀じっしゅう住職(88)は「作品を初めて裏側から見て驚いた。修理の過程で様々な発見があり、歴史の重みを感じた。現代の最新技術を使って、これから1000年先、2000年先までも作品を伝えていくことができるような本格的修理を期待したい」と語った。

(2026年1月11日付 読売新聞朝刊より)

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