紡ぐプロジェクトの助成対象となった、国宝「薬師如来
坐像 」(奈良・新薬師寺蔵)、重要文化財「仏涅槃 図」(岡山・遍明院 蔵)の修理に向けた調査、確認を行った。前回の修理から劣化が進んでいるため、慎重な作業が必要となる。
岡山県から初めて助成対象に選ばれた遍明院(瀬戸内市)所蔵の重要文化財「仏涅槃図」は、作業を担当する「光影堂」の工房で状態を確認したところ、絵が描かれている表側の「絵絹」と、裏側に貼った「肌裏紙」の間に茶色い層がみつかったため、成分を調査する。
黒井覚然住職(56)、岡山県の担当者らが、鑑賞の妨げになる茶色の層をできるだけ取り除き、絵絹がなくなり裏側の彩色が露出している箇所は、表側からも絹を補う――などの作業を進める方針を決めた。
光影堂の沖本明子主任技師は「色づけした
また、京都国立博物館の保存科学室で、X線による調査を行い、幅約153センチ、高さ約163センチの画面で、白、青、赤、緑など色のポイントを選び、約60か所でどのような絵の具を使っているか調べた。 黒井住職は「作業方法も一つ一つ丁寧に検討されているのがわかった。良い形で継承していきたい」と話した。
※写真はいずれも京都国立博物館で
紡ぐプロジェクトとは
国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。
(2023年12月3日付 読売新聞朝刊より)
0%