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2025.1.8

【修理リポート】重要文化財「厨子入普賢菩薩像ずしいりふげんぼさつぞう」(京都・岩船寺蔵)― 柔和な顔立ち 表面安定 彩色の剥落止め 本像修理完了

2024年度から2年計画で修理に入っていた岩船寺(京都府木津川市)所蔵の重要文化財「厨子入普賢菩薩ずしいりふげんぼさつ像」について、本像の修理が完了し、〔2024年〕12月10日、同寺本堂に戻された。像を収める厨子は引き続き修理を進める。

修理を終えた普賢菩薩像

普賢菩薩像は像高約39センチ、クスノキ材の一木造り。普賢菩薩像は平安時代、成仏を願う女性の信仰を集めたという。ほっそりとした体つき、彫りが浅い柔和な顔立ちなど平安後期の要素が認められることから、11世紀の制作とみられる。

普賢菩薩像を乗せた白象は高さ約27センチ。台座、光背とともにヒノキ材で後補。普賢菩薩像と白象の表面は彩色仕上げで、朱、緑青などが残っている。

直近の修理は1911年(明治44年)で100年以上が経過。表面の彩色の剥落はくらく、虫食いなどが目立っていた。このため修理では、剥落止めや虫食い穴への樹脂の注入などを進めてきた。

一方、厨子は高さ約150センチ。ヒノキ材。表面は布貼りの上に黒漆を塗って仕上げている。絹に描いた法華曼荼羅まんだら図を奥の壁に貼りつけている。南北朝時代の制作とみられ、本像と同様の劣化が進んでいるという。

この日は仮安置台が本堂に持ち込まれ、白象、普賢菩薩の順に収められた。

岩船寺の仮安置台に収められる様子(12月10日、京都府木津川市で)=渡辺恭晃撮影

植村幸雄住職(85)は「普賢菩薩像は表面が落ち着き、明るくなったように感じる。普賢菩薩を描いた絵画は多いが彫像は少ない。多くの人にお参りをしてもらいたい」と語った。

(2025年1月5日付 読売新聞朝刊より)

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