修理を担当する「修美」の工房で状態を確認した。折れが目立っているほか、巻いたままの状態で水にぬれた時期があったのか、染みが目立つ箇所や、本紙が劣化して欠け、以前の修理で補修されている箇所があった。2024年度まで3年かけて解体し、裏打ちなどの作業を進める。
絵因果経は、釈迦の伝記を伝える「過去現在因果経」に、経文の内容を表す絵が添えられた経典で、奈良時代(8世紀)に中国で作られた原本を取り寄せ、書写したと考えられている。中国に作例は残っていないうえ、巻物を切って断簡にしたものが多く、まとまって伝わるのは貴重という。
京都国立博物館の井並林太郎研究員(33)は「絵因果経の料紙は麻製とされており、平安時代以降の巻物とは異なる。現在の技術で修理を行うのは初めてだが、平安以降の紙と同じノウハウで修理ができるのか、よく検討しながら進める必要がある」と修理のポイントを説明した。
高井隆成住職(74)は「以前にも修理されていた跡があり、大切に守り継がれていたからこそ、今でも色鮮やかなまま見ることができる。次の世代に残さなければならないと改めて感じた」と話していた。
(2022年7月3日付 読売新聞朝刊より)
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