日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2025.1.8

【最善の修理 最高の技術で7】重要文化財「蘭亭曲水図」(京都・隨心院蔵)

2025年度「紡ぐプロジェクト」修理助成事業

2025年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業には、能登半島地震の被災地、石川県から初めて申請があった。重要文化財「不動明王坐像ざぞう」(法住寺蔵)だ。滋賀県から申請があった重要文化財「石山寺多宝塔柱絵」(石山寺蔵)は、国宝建造物に描かれた絵画を現地の建物内で修理する、紡ぐプロジェクトとしては初の取り組みとなる。貴重な文化財を未来に伝えるため、困難なケースであっても最善の修理方法を検討し、現代の最高水準の技術で作業を進めていく。

岩絵の具で丹念に 14メートルの屏風

総金地の輝かしさで知られる8曲2双計4隻(各縦約1メートル、横約3.5メートル)の屏風びょうぶ。17世紀前半に活躍した狩野山雪の代表作である。支援者であり、隨心院門跡を多く輩出した九条家ゆかりと考えられている。

353年、中国・浙江省の蘭亭らんていで開かれた風雅の会が画題。画面右から左へ滝から流れる水にはすの葉にのせた酒杯を浮かべ、両岸に列座する文人42人が漢詩をつくる風景を描いた。空は金箔きんぱく、地面は金砂子をふんだんに用いて表現している。

童子を含む多くの人物や植物、楼閣などの建物は色鮮やかな岩絵の具で細部まで丹念に描き込まれている。全4隻をつなぐと14メートル以上、絵巻物のような長大な画面が出現する。

長く本格的な修理が行われず、絵の具の剥落はくらくと粉状化、下地のゆがみが目立つ。特に画面全体の要でもある流水部分の白絵の具は損傷が激しく、危険な状態にある。汚れの除去や縁などの新調に2年を見込む。

(2025年1月5日付 読売新聞朝刊より)

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