2025年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業には、能登半島地震の被災地、石川県から初めて申請があった。重要文化財「不動明王坐像」(法住寺蔵)だ。滋賀県から申請があった重要文化財「石山寺多宝塔柱絵」(石山寺蔵)は、国宝建造物に描かれた絵画を現地の建物内で修理する、紡ぐプロジェクトとしては初の取り組みとなる。貴重な文化財を未来に伝えるため、困難なケースであっても最善の修理方法を検討し、現代の最高水準の技術で作業を進めていく。
平等寺の如意輪観音坐像は像高約81センチ。ヒノキとみられる針葉樹材の寄せ木造り。本像の特徴は面長な整った顔立ちで、頭髪を丁寧に彫り、細身の胴部や手足から受ける印象により女性的な像と感じられる点にある。
六臂(6本の腕)の像容を違和感なくまとめ、落ち着いた作風から、鎌倉時代の13世紀後半頃の制作と推定される。ふだんは平等寺境内の文化財収蔵庫に保管されている。
本像は鎌倉時代の如意輪観音像の中でも屈指の美しさを誇る作品とされてきた。しかし、過去の修理時に施された補修材が必要以上の範囲に及んでおり、これが変色。現状は目の周辺に隈ができたようになり、全体に黒ずみ、当初の美しさを失いかけている。
また、虫食いによる傷みが進行し、衣の端などに損傷部分が見つかっているほか、脇手の取り付けに緩みもみられる。光背台座も表面の浮き上がりが顕著となっている。
これ以上の劣化を止めるため、殺虫処理、表面のほこり除去、剥落止め、虫穴詰め、部分解体などの修理が急務となっている。2026年3月の修理完了を目指している。
(2025年1月5日付 読売新聞朝刊より)
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