文化庁や宮内庁、読売新聞社が推進する「紡ぐプロジェクト」で、約9か月間の修理を終えた重要文化財「道邃和尚伝道文」が30日、所蔵する天台宗総本山・比叡山延暦寺(大津市)に戻された。境内の国宝殿で6月22日~7月下旬に公開するほか、2021~22年に京都国立博物館などで開かれる特別展「最澄と天台宗のすべて」(読売新聞社など主催)でも展示する方針。
同伝道文(縦約25センチ、長さ約82センチ)は、延暦寺を開いた伝教大師・最澄が、中国の高僧・道邃から授かったとされる古文書。激しい折れや虫食いなどの傷みが進み、昨年6月から修理されていた。
この日、修理を担った「光影堂」(京都市中京区)の大菅直社長らが同伝道文を持参。国宝殿の宇代貴文学芸員は「折れが目立たず、墨書も美しく見えるようになった」と感嘆し、同寺管理部の武円超主事は「来年に1200年大遠忌を迎える伝教大師の功績を伝える寺宝。次代に託せる状態に戻ってうれしい」と感謝した。
修理では、同伝道文の裏側に経典が書写されていた事実も新たに判明し、宇代学芸員は「なぜ経典が書かれたのか研究が必要。機会があれば裏側も見えるように展示したい」と語った。
(読売新聞大津支局 渡辺征庸)
2020年3月31日付読売新聞から掲載
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