智証大師・円珍は、平安時代初期に活躍した僧侶である。中国・唐で密教を学び、天台宗を統括する天台座主を務めた。
円珍を宗祖とする滋賀・三井寺(園城寺)では、死に際して姿を模した彫像が作られ、本作はその写しとして若王寺に伝わってきた。
穏やかな表情で口元に笑みを浮かべているようにも見え、高僧でありながら親しみを感じさせる。印象的なのが、頭の先がとがったシルエットだ。
円珍の彫像は後世に数多く制作され、独特の頭の形も踏襲されていった。
約10か月で、表面の黒ずみやほこりを除去し、彩色の浮き上がりなどを修理する。台座を強化し、像の安定も図る。
(2021年1月7日読売新聞より掲載)
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