重要文化財 紙本墨画蓮池図 (大阪・西福寺蔵)
■ はかない雰囲気
京都で青物問屋を営んでいた伊藤若冲は、天明の大火(1788年)で家を失い、大坂の薬問屋の主人に迎え入れられた。その時期に寺院の障壁画として描いたもので、極彩色のイメージとは異なる若冲の墨の表現を見ることができる。
蓮池図というポピュラーな主題だが、たくさんのハスの花が咲く穏やかな風景ではない。余白の多い画面に朽ちたハスがポツンと描かれるなど、荒涼としてはかない雰囲気が漂う。
もともと、この作品は、金地に色とりどりの鶏やサボテンを配した華やかな障壁画「仙人掌群鶏図」の裏側に描かれたものだった。西福寺に残る両作品は、バラエティーに富む若冲の画風を象徴している。
■3年かけ解体修理
本紙や表具の劣化や汚れが激しく、しわや剥がれも多く発生している。過去の修理で補った紙の色の違いなども目立っている。
本紙を裏側から支える裏打紙を取り換えるなど、3年かけて解体修理する。表具の一部も新調する。
(2021年1月7日読売新聞より掲載)