京都国立博物館の文化財保存修理所で修理が進む、東寺(京都市)所蔵の重要文化財「木造観音菩薩・梵天・帝釈天立像(二間観音)」で、像の内部構造などを調べる光学調査が実施された。
仏像など木造彫刻は、一般的に以下のような工程で修理を行うという。
■清掃・調査
清掃などを行った後、修理前の現状の確認や、彫刻の材質、内部構造を確認するためのX線調査などを行い、修理の手順や内容を細かく検討する。
■解体
複数の具材を使っている仏像で、接合部分が緩んだり、複数の具材で不具合が生じたりしている場合に、修理作業のため彫刻を解体することがある(今回、二間観音は解体を行っていない)。
■剥落止めなど
彩色や箔を施した部分に接着剤を使って剥落を防いだり、虫食いでできた穴を塞いだりといった作業を行う。
■補強
構造上の不安がある場合は、支柱を内部にいれるなどして彫刻を補強する。
■組付け
解体した場合は、再び彫刻をくみ上げる。
■仕上げ
修理した部分に周囲と似た色を塗るなど、全体的なバランスを整える作業を行う。
二間観音は、衣に施された精緻な截金がところどころ浮かび上がって剥落の危険があり、法要で用いられる護摩のススなどが、全体に付着していた。
今回は修理の作業に先立ち、X線を使った2種類の調査を行った。調査を前に汚れが取り払われ、調査で傷みが進まないよう剥落止めが一度行われたという。
最初に行った透過X線調査は、像の内部構造を調べる目的で、像を機械の上に載せ、360度回転をさせて撮影した。像にはどのような木が使われているかを知るために木目を確認したほか、像の構造や像を支える「ほぞ」の部分の長さなどを調べた。
続いて行われた蛍光X線調査は、ショットガン型の機械を使い、仏像の飾りに使っている金属の材質や彩色部分の顔料の成分などを調べた。
これまでの調査で、3体の像への彫刻刀の刃の使い方が非常に似ていることがわかった。文化庁の奥健夫主任調査官は「おそらく彫刻は一人の人間が行ったのだろう。彫刻も彩色も金具も截金も、どれをとっても最高レベルだ」と感心していた。
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