2020.4.17

賑やかな花見、高精細で甦る 国宝「花下遊楽図屏風」を複製

花下遊楽図屏風(高精細複製品)の前で語る文化財活用センターの松嶋さん(右)とキヤノンの蒔田さん

東京国立博物館所蔵の国宝「花下かか遊楽図ゆうらくず屏風びょうぶ」は、桃山時代の巨匠・狩野永徳の弟、長信(1577~1654年)の手による六曲一双の屏風で、17世紀の作品だ。

残念ながら、貴婦人が描かれた右隻うせきの中央二扇は、修理中に関東大震災に遭い、失われてしまった。だが、大手精密機器メーカーのキヤノンが今回、高精細技術で全体を複製し、失われた部分を“復元”した。

「風流踊」鮮やかに

屏風に描かれているのは、にぎやかな花見の様子。右隻では、満開の桜の下に女性たちが、左隻では、貴公子たちが咲きほこる海棠かいどうの下に集っている。

貴公子の視線の先にいるのは、風流踊ふりゅうおどりを楽しむ人々。風流踊は、歌や笛、太鼓、かねなどでにぎやかにはやしながら踊る芸能の総称とされ、もとは疫病退散を祈る芸能だったと言われる。

華やかな衣を翻す女性たちが目に鮮やかで、長い刀を持って踊る男装の一団は、当時流行の阿国歌舞伎の伊達だて姿を写したものとみられる。自然をで、春を謳歌おうかする日本の情景を見事にあらわした作品だ。

ガラス乾板から復元

キヤノンは今回、国立文化財機構と連携し、明治時代に撮影されたガラス乾板写真をもとに、屏風の高精細複製に取り組んだ。両者は2018年から、文化財の複製品を活用した共同プロジェクトを実施しており、この屏風の複製はその一環だ。

同機構文化財活用センターの松嶋雅人課長は「複製品をきっかけに、この作品を多くの人に知ってほしかった」と語る。背景には、キヤノンが07年から進める、文化財の高精細複製品を製作して寄贈する「つづりプロジェクト」で培われた高い技術力がある。

国宝「花下遊楽図屏風」狩野長信筆(右隻) 東京国立博物館蔵の現品。白黒部分はガラス乾板の写真
国宝「花下遊楽図屏風」狩野長信筆(左隻) 東京国立博物館蔵の現品

欠損部分を復元するため、唯一の手がかりである明治時代のガラス乾板の全体写真と高精細の画像を対比させ、それぞれの白、黒の関係性を分析した。さらに、劣化分や修理の跡を調整。彩色は、当時の記録などから判明している箇所以外はあえて施さなかった。

キヤノンデジタルプリンティング事業本部上席の蒔田剛さんは「現存している部分と違和感がないよう、階調性を一致させるのが技術的に難しかった。今後はさらに解像度を上げたい」と話している。

2020年4月5日付読売新聞朝刊より掲載

「花下遊楽図屏風」高精細複製品は、特別展「体感!日本の伝統芸能」(東京国立博物館、開幕は新型コロナウイルス感染拡大防止のため延期しています)で展示される予定です。公式サイトはこちら→ https://tsumugu.yomiuri.co.jp/dentou2020/

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